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2017年11月

  • 事務所便り/第29回 『プチプチうらない』

     私はお菓子が大好きなのだが、最も好きなお菓子の中の1つが、「プチプチうらない」というお菓子だ。チョコレートとラムネの2種類あるが、私はチョコレート専門。
     これは、チーリン製菓という企業が販売していて、チョコを食べながら占いができる何とも楽しいお菓子だ(と、私は思っている)。パッケージのプラスチック部分を押すとアルミ部分が破れ、アルミ部分に書いてある占いの結果を見ることができる。結果は「◎」「○」「△」「×」の4つ。
     プラスチック部分は、1シート当たり18個あり、18個の項目で占いをすることができる。では、どのようなことが占えるかというと、「ともだち」「けんこう」「れんあい」などオーソドックスなものから、「なやみごと」「けっこん」「みらい」など若干ヘビーなものもある。(ちなみに、「みらい」で「×」が出ると結構悲しい。)たまに「なわとび」「はやおき」など、ものすごくピンポイントで占ってくれるものや、「ハッスル」「ジャンプ」など、これは「◎」が出たところで喜ぶべきものなのだろうか?と感じるようなものもある。
     私はこのプチプチうらないチョコが大好きすぎて、見かけたら即決で大人買いすることにしている。普段は優柔不断でオロオロ悩むタイプだが、こういうことに関して迷いはない。娘達と一緒に「やったー!うらないチョコある!買おう!!」と、買い物カゴにわらわらと入れる。知り合いには絶対見られたくないカゴの中身。(レジの人に見られるのも実はちょっと恥ずかしい。)
     大人買いと言っても、1シート20円くらいのものなので、20円でこれだけ楽しめるなんて、とても幸せなことだと思っている。この画期的(?)なパッケージは、意匠登録などされているのかしら・・・と気になって検索してみたが、見つけることができず。。。残念。
     ちょっと落ち込むことがあった日も、チョコを食べながらプチプチうらないをすれば、嫌な気持ちも忘れられる。かもしれない。世の中の、こんな面白い工夫に感謝。
                                   事務担当:M

2017年10月

  • 事務所便り/第28回 『アフリカの思い出
     

     ある夏の暑い日、突然、大使館勤務の話が舞い降りて来ました。
     当時特許庁に勤務していた私にとって、まさに晴天の霹靂。それ以前、特許庁職員が大使館に出向した例が全くなかったからです。任国は西アフリカのナイジェリア。ポストは経済担当書記官。現在のようにインターネットもなく、極めて限られた情報に基づいて、短時日で赴任を決断することになりました。
     大使館は、外務省職員と各省庁からの出向者との混成部隊で構成されています。多岐にわたる国家間の問題に外務省職員だけで対応することは困難だからです。とはいえ、他省庁からの出向者には、語学の高いハードルがあります。外交に関する専門知識を欠いています。理系の私には、「経済」も新たな挑戦でした。しかし、半年間にわたる外務研修所や各省庁での研修など、準備を整えるシステムが確立されていました。
     ナイジェリアはアフリカの大国です。OPEC加盟の産油国で、GDPは2位のエジプト、3位の南アを大きく上回って、アフリカ最大。人口もアフリカ最大で、2位のエチオピアの2倍超の2億人(2016年現在)。面積は日本の2.5倍。南部のギニア湾沿いは熱帯雨林気候、北部はサハラ砂漠の南縁から続くサバンナ気候。国土の5割超が可耕地で、3割が耕作されています。約250の部族がそれぞれの言語を持ち、英語が公用語。宗教面では、キリスト教徒が南部、イスラム教徒が北部に多く居住しています。
     私の在勤当時(1978~79年)、ナイジェリアは原油価格の高騰で財政が大いに潤い、活況を呈していました。ナイジェリア政府の多くの職員が、日本に学んで工業化をなしとげたい、との決意を熱く語っていました。当時、米国への留学生の数は、ナイジェリアが第1位。一族の優秀な子弟を親戚中で援助して海外留学させる風習もあります。在勤中、他のアフリカ諸国を訪問する機会も少なからずありましたが、ナイジェリア人のアグレッシブな気質は、群を抜いていると感じることが多々ありました。国の発展の条件に恵まれているといえるでしょう。
     もっとも、インフラはまだまだ整備途上。治安も悪く、武装強盗が多発していました。しかし、強盗の目的は金品にあることが明確で、おとなしく目的物を引き渡せばそれで終了、との暗黙のルールがありました。酷暑に加え、停電、断水、輸入制限による物資の欠乏など、日常生活も楽ではありません。このような中で、同国在住の外国人は、不思議な連帯感を共有していました。
     ナイジェリアでの私の住居は大使館の敷地内にあり、すぐ近くにナイジェリア陸軍の宿舎がありました。同国の軍隊は、ビアフラ戦争の結果、北部出身のイスラム教徒が多数を占めており、宿舎内のラウドスピーカーから、毎日数回、兵士の礼拝のためのコーランが高らかに鳴り響いていました。スピーカーが鳴り始めると、付近を歩行中の人がその場に絨毯を広げ、携帯容器の水で手と口を清め、敬虔に礼拝する姿を毎日のように見かけました。その一方、市内にはキリスト教の立派な教会もあり、宗教を巡る対立はまったくありませんでした。飲酒するイスラム教徒や、複数の妻を持つキリスト教徒がいるなど、宗教に寛容な国との印象を強く持ちました。
     私の離任後、同国の発展は停滞しました。原油価格の下落により債務不履行が発生したこと、輸入代替産業の育成をコアとする同国の発展モデルが、その後のグローバル化の進展にそぐわなくなったことなどのためです。
     しかし、同国は、近年再び成長を開始し、上述のとおり、アフリカ最大の経済力を維持しています。
     離任後、同国を再訪する機会がないまま現在に至っていますが、今でも新聞やインターネットで「ナイジェリア」との文字が目にとまると、記事に引き込まれます。
     残念ことに、近年、イスラム過激思想がサハラ砂漠をはるばる越えてナイジェリアにも波及して、イスラム教徒の多い北部で「ボコハラム」と名乗る過激集団がテロ行為を繰り返しています。
    あの宗教への寛容性は過去のものになりつつあるのだろうか? 願わくは、工業化だけでなく、宗教に対する寛容性も日本から学んでもらいたいものである。
                                (弁理士K.M)

2017年9月

  • 事務所便り/第27回 『C'est l'arbre qui cache la forêt』

      フランス語の学校に通い始めてもう何年になるか。
      横幅7~8メートルはある黒板に古い教壇が置かれた教室の並ぶクラシックな学校だ。
      今履修しているのは仏訳のクラスで、生徒は事前に渡された和文を次の回までにフランス語に訳していき、授業で先生が生徒の訳を、1文ずつ解説を交えつつ添削するという内容である。
      先生は、「さあ、最初は誰からだ?」と生徒の自主性を重んじるため、黒板に出て自作の文章を披露する人間は自然と限られる。その中で私は、静寂の空間に身を沈めたままでいることが苦手な性格が災いし、自分の訳に全く自信がないにも関わらず、毎授業、複数回、黒板上に自分の訳をさらけ出している。
      ところで、フランス語を勉強し始めてから、英語ってなんて楽なのだろうと思うことがある。
      フランス語は英語と比べ活用の機会が多すぎるのだ。
      動詞の活用は何より、名詞、代名詞、形容詞がコンテキストに沿って次々変化する。
      動詞に至っては、その名も[La Conjugaison]というまるまる一冊が動詞の活用で埋め尽くされた本が存在するほどだ。友人はこれを「悪夢」と呼んでいた。表紙はポップでかわいいのだけれど。
      話を授業に戻す。
      黒板に向かう際に気をつけたいのが前の人が書いた文章からのバトンタッチであるということだ。それに前の文章で先生が添削しながら解説した点は、続く自分の文章では改善したいと思うと、ノートに書かれた自作の文章をただ何も考えずに黒板に模写していくわけにはいかない。
      例えば自分が三人称主語で作文していたとしても前の人の文章が一人称であれば合わせた方がいいだろう、前の文章で選択された単語や先生に”c’est le mieux”と言われた表現があれば引き続きそれらを使う方がいいだろう、とあれこれ思いながら、黒板の前に出て、左手にノートを持ちつつ、体を右に移動しながら言葉を連ねていく中で、「あ、そういえばここはさっきこう言われたな」、とノートに書かれた自分の文章に黒板上で修正を加えていくのだが、ここで文法上の罠から逃げられたことがないのだ。
      一つ何か修正を加えるとそれに伴い、登場する文字それぞれの活用や変更に配慮しなければならないのに、黒板と至近距離で向かい合っているうちには気付かない。
      一文書き終え、黒板から自分の席に戻り、一息ついて、今書いた自分の文章をざあっと俯瞰した瞬間。
      あ。「複数のSをつけ忘れた」「代名詞を変えるのを忘れた」「あの動詞は活用するんだった」「冠詞の修正を忘れた」「アクサンを付け忘れた」などなど、面白いほどにいくつもの文法エラーが一気に目に飛び込んでくるのだ。
      この事象が、ある意味、依頼を受け手続完了まで道筋を立て手続を進めていく今の仕事に似ている、と先日授業に出ているときにふと思った。
      単願が共願になったり、出願前に実は公開されていたことが分かったり、出願人の住所や印鑑が変更されていたり、出願人が実は減免条件に当てはまることが分かったり、何かと同時に分割出願することになったり、突然委任状が必要な手続が発生したり・・・と最初に予想していたスケジュールに変更が入ることはよくある。一つ何かが変更になったらそれに付随して必要となる手続きが増えたり変更になったり。私が組み立てるフランス語の文章のようだ。
      一つの手続が変更になったそのとき、予定していた他の手続は“活用”しないのか。変更を加えた筋道を“黒板から遠ざかって”眺め直してみる。変更するたびに眺め直す。
      木を見て、森を眺める。ついでにその先につながる空まで眺めてみる、その冷静さは、急いでいたり変更が多ければ多いほどますます必要なのだと改めて考えた。
      木が森を隠してしまうものらしいから。
                                  (国内事務  Y.H)

2017年8月

  • 事務所便り/第26回 『旅行気分

     特許庁のホームページに隔月で掲載されている広報誌「とっきょ」という雑誌には、特許庁の最新の取り組みや様々な企業の特許が紹介されており、毎回興味を持って読んでいます。
     なかでも、地域団体商標制度に登録されている全国の特産品を紹介するコーナーで、これまで旅行で訪れて食べた事があるものが紹介されていると、とても嬉しい気持ちになります。初めて目にするものが紹介されていると、その特産品や土地を調べて、思いを馳せたりもします。
     東京には、地方自治体のアンテナショップが多数あり、デパートでも物産展が頻繁に開催され、旅行をしなくても全国各地の特産品を購入する事が出来ますし、インターネットでのお取り寄せも簡単に出来るようになりましたが、やはりその土地の空気の中で、現地の人と触れ合い、名物を食べたりお土産を選んだりすることには敵いません。
     とはいっても頻繁に旅行は出来ませんので、便利な時代の恩恵を受けて、今日も東京で旅行気分を味わいます。


    (事務担当:F)

2016年11月

  • 事務所便り/第25回 『ごみ捨て

    内輪の話で恐縮ですが、先日、弊所の入居するビルのごみ捨てのルールが変わりました。今までは「燃えるごみ」「燃えないごみ」「ビン・缶」「ペットボトル」といった仕様だったところ、「燃えるごみ」と「燃えないごみ」が再編され、今後は「紙ごみ」「それ以外」といった分別になるのこと。とはいえ、今までは「燃えないごみ」用の箱が置かれていたスペースに「それ以外」用の箱が置かれてしまったがためでしょうか。未だに「蜜柑の皮は…燃えないごみ?」といった混乱が生じています。
    特許の世界では、制度の改正が細やかにかつ比較的頻繁になされるように思います。そちらでは混乱をしないよう、理解していかねばならないと思います。

    (事務担当:S)

2016年10月

  • 事務所便り/第24回 『東京の街

     朝の満員電車で、隣の女性とのわずかな隙間に紙袋にも入っていないコーヒーのカップを持っている彼女の手に気がついた。もし何かの拍子にこの狭い空間でコーヒーをこぼしたらどうするのだろう。
    30年ほど前欧州のある都市で生活していた私は、街で歩きながら、地下鉄に乗りながら、ものを食べたり飲んだりしている人々を多く目にし、当時の東京では見たことのなかった行儀の悪さに驚きつつ、東京でそういったことがないことを日本人として誇りに思ったものである。しかし、それからそんなに時を経ることなく、同じような光景を東京でも見ることになろうとは当時の私は思いもしなかった。
    今、公共の乗り物・場所で、他人の存在をあまり意識することなく、自分の家か部屋にいるような様子で過ごしている人たちを目にしない日はあるだろうか・・。

    先日、リオデジャネイロから引継いだ五輪旗とパラリンピック旗の都庁での掲揚に偶然居合わせました。前回の1964年のオリンピック開催時、東京では準備のために区画整理、首都高などの道路整備等さまざまな大きな変化、また、外国から訪れた人たちに美しい東京を見せたいという気持ちから、街を綺麗に清潔にしようという人々の思いが行動や形として生活の中に見られたそうです。これから4年後のオリンピック開催までの間、この東京では更に建物、交通含めいろいろな計画が進められ、大きな街東京となる事でしょう。
    この大きなイベントを前に、私も含め東京が「田舎」そのものであるものたちにとっては、今まであった東京の良い部分を残しそれを大切にしつつ、また変化を反省しながら人に優しい街、前に進む街になっていくきっかけとなってほしい…と、街を歩いているときふと思う今日この頃です。

    (事務担当:ef)

2016年8月

  • 事務所便り/第23回 『年を重ねた弁理士(SO)のつぶやき』

     読売新聞の日曜版に、”名言巡礼“という記事が連載されています。大分以前の日曜版に、手塚治虫先生の”名言巡礼“が載せられていました。
     先生の名言“漫画家になりたいのであれば、漫画を勉強しなさんな”
     この言葉は、先生が、漫画を通して描くべきものを名言として残されたものと思われます。現在では、3Dとか、美しい画像とか、強烈なアクションとか、形だけを追い求め、評価される傾向がありますが、先生の名言はそのような傾向に、一石を投じられているものと思われます。
     そんな風潮を、無理やり特許の世界に結び付けるのも恐縮ですが、昨今の特許制度の運用は、形だけにとらわれて、制度の本質を見失っているのではないかと危惧するものであります。
     特許法自体も、毎年の法改正により、やたらと特許庁目線の処理軽減のための条文が盛り込まれ、特許庁や、裁判所の判断も、「基準」を作って、安易に形に当てはめようとする傾向があります。なお、全てがそういうことでないことはもちろんのことです。
     昨今も、昨年、出された最高裁のいわゆる“プロセス規定の物の発明(クレーム)」について、特許庁で審査基準が作成され、そのような発明の特定が許されるのは、「不可能・非実際的事情が存在するときに限られる」との運用が始められていますが、法律上も、過去の解釈、運用においても根拠がなく、最高裁の判決があったというだけで、理由が見当たりません。また、審査基準が改定され、判断が緩和され、「食品の用途発明」についても特許が認められるとの審査の運用が始められていますが、もともといかなる理由で「食品の用途発明」は制限されていたのか、いかなる理由で緩和されたのか根拠が見当たりません。しかしながら、何れの場合も、理由のない、その場対応の場当たり的なように感じられます。
     このような昨今の特許制度の運用を考える時、もう一度制度の基本に立ち返って、制度が何を目指すのか、何を基本とすべきものかを考えた上で、実務を構築する必要があるのではないかと思われます。そんなときに、“温故知新”の格言も、心に刻むべきかもしれません。
     “年を重ねた弁理士のつぶやき”としては、少々長く、理屈っぽいように思われますが、手塚治虫先生の”名言巡礼の言葉は、漫画の世界だけではなく、我々の特許の世界にも、一つの指針を投げかけられているように思われます。

    (弁理士:S.O)

2016年6月

  • 事務所便り/第22回 『国民の祝日』

    国民の祝日が,1年に何日あるかご存知でしょうか。
    国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第43号)が施行され、平成28年から、8月11日は、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」日として、国民の祝日「山の日」となりました。
    まだ記憶に新しい先月のゴールデンウィークも,憲法記念日やみどりの日,こどもの日と国民の祝日からなる連休です。
    この国民の祝日は,1年に16日あるそうですが,6月には1日もないのです。
    これから梅雨時…。山の恩恵に感謝する日があるのなら,雨の恩恵に感謝する梅雨の日があってもいいのかな?と思ってはみたものの,せっかくの祝日,出かけたいのに雨…じゃ,感謝できないかもしれない…!
    梅雨の日はあっけなく私の中で却下された。

    (事務担当:A.I)

2016年5月

  • 事務所便り/第21回 『こどもの日に思うこと』

    「柱のキズはおととしの~♪」。これは「せいくらべ」という皆さまご存じの、こどもの日のせいくらべの情景をうたったものだ。自分の子供時代を思うと、今の子供は一見恵まれているようで、大変だなあ、と考える。
    私の子供のときは、近所に子供が多く、夕方遅くまでカンケリやなわとびをしたり、草むらで首飾りをつくったり、何かの実を集めたりと、とにかく遊びまわっていたものだ。ときには遊びに夢中になって、「ドブ」に落ちるといった気の毒な事態も発生した。大人も子供も大騒ぎの、鮮烈に記憶に残る子供時代の大事件だ。(ちなみに、私ではありません)。
    今は子供の数も少ないせいか、子供が大勢集まって歓声をあげるといった光景を目にすることが減った。街は整備され、遊びも変わったし、家庭の様子も変わった。小学校から受験に備える家庭も増えた。一方では、こどもの6人に1人が貧困だという。
    日本人は戦後、世界から手本とされる復興を遂げてその後も豊かな社会を築いてきたはずだが、それにつれて人とひととのつながりが薄れて、もはや身内、親族といった集団では家庭の庇護からこぼれ落ちそうになる子供を救うことが難しくなったように思える。皆が自分のことで精いっぱいなのだが、昔と変わらない子供の笑顔を見るにつけ、もっともっと上ばかりを見るのではなく、温かい人の手の温もりを大切にしようと、こどもの日に思った。

    (翻訳:RS)

2016年3月

  • 事務所便り/第20回 『事務所創設20周年を迎えて』

     特許庁を退職後、1996年に八丁堀に「廣田特許事務所」を開設してはや
    20年が経ちました。
     開業当初は仕事の依頼がほとんどありませんでした。その当時、将来への
    不安と期待が入り交じっていた頃の八丁堀での俳句です。
       隅田川 春の潮(うしお)が 逆上る
     そんな折、四国徳島の充填包装機械の大手の四国化工機株式会社と顧問契約
    を締結することができました。徳島出身の私は地縁のありがたさをしみじみと
    かみしめたものでした。徳島と香川の県境の阿讃山脈を眺めての一句です。
       春うらら 讃岐は丸き 山つづく

     その後事務所を赤坂に移し、あっという間に月日が流れ過ぎていきました。
     その間、幸いにもクライアントに恵まれ、たくさんのお仕事をいただきました。
    ですから、明け方まで仕事をしたことも多々ありました。夏の夜明けの赤坂の景です。
       短夜や ここ赤坂の 明け鴉
     また例年、年の瀬が迫った年末まで仕事をすることも多々ありました。
       一仕事 終え歳末の 街に出る

     しかし、特許事務所の運営には常日頃から不安と心配がつきまといます。一つの
    失敗で事務所が傾きかねません。そのような不安は台風が明朝上陸する前夜
    の不安とどこか似ています。
       熱き茶を 淹れて台風 前夜かな

     事務所を開設して20年、人にたとえると成人式をまさに迎えたということになります。
    今後とも、お客様に対する感謝の念を忘れずに謙虚にやっていけばと思います。
       もう一度 謙虚になれる 冬至かな
                                            (所長弁理士 廣田雅紀)

2014年8月

  • 事務所便り/第19回 『タクシーの運転手さん』

     先週末、3歳の息子と母の三人で、母方の祖父の墓参りへ行きました。
     最寄りの駅からお墓までは、歩いて行ける距離でしたが、その日は小雨が降り、また雷が鳴る大気の状態が不安定な天候ということもあり、タクシーで行くことに。
     そのタクシーの運転手さん、お墓の場所がなかなか理解できず、頼りない印象でしたが、車内ではおしぼりのサービスを提供し、本格的な雨となった墓参りの際には、ロウソクに灯をともす母に、自分は濡れながら傘を差し掛ける心配りのある方でした。母によると、この地域のタクシーの運転手さんは、皆愛想が良く親切にしてくれるとのこと。
     本来タクシー業界はサービス業だと思いますが、ワンメーターで行ける距離だと、露骨に嫌な顔をし、急発進や急ブレーキを平気でする運転手に、嫌な思いをした人は私だけではないと思います。
     田舎のタクシーの運転手さんの心配りに触れながら、クライアントに満足・感謝していただけるように業務に取り組まなくてはと再確認しました。
                                                 (4年目特許技術者)

2014年6月

  • 事務所便り/第18回 『手紙のこと』

     小学生のころ、叔母に「文章力が身につくから」と勧められ、同い年のいとこと文通するようになりました。教育的指導のもとに始まった文通ですが、手紙を通じて仲が深まり、お互いが就職するまでの十数年にわたって、月に1、2通ほど手紙を交わしていました。
     文通で文章力が養えたかどうかは分かりませんが、筆不精にはならずに済んだようです。可愛いレターセットや記念切手、ふみ香や封印シールなど、文房具店の手紙用品売り場では、あれこれ見たり集めたりして、手紙を書くときの便箋や切手の組合せに悩むのも楽しみの一つでした。
     とはいえ、勤労生活も長くなり、また家庭の雑務にも追われる身となると、なかなか手紙を書く時間が得にくく、山ほど集めた便箋は所在なげに眠っています。このままでは黄ばんだ遺品となること必至なので、若気の至りで購入した恥ずかしい便箋(今では忘れられたアニメキャラクターや動物の毛皮柄など)を整理する傍ら、友達への暑中見舞いや誕生日祝いを、メールから手紙にシフトして、少しずつ在庫整理し、筆まめに回帰せねばと感じるこの頃です。
                                                    (事務担当 RK)

2014年5月

  • 事務所便り/第17回 『トルコ語って面白い』

     トルコ語は語順が日本語とほとんど同じです。とは言いつつ、人称によって変化した語尾を動詞や名詞や形容詞に付けたり、母音調和といって、語尾を付けるときは本体の語の母音と合せる点などなかなか使いこなせるまでには遠い道のりです。発音は、例外を除きアルファベットをそのまま読めばよいので、それほど難しくはありません。おもしろいところでは、「c」は、不思議なことに「シ」ではなく「ジ」と読みます。「i」のほかに「i」の上の点がないものもがあり、その発音は「イ」ではなく「ウ」になります。トルコ語は、アルファベットをそのまま読めることから、日本語にもある発音に出くわすことがあります。意味は違うのでときどきプッと笑ってしまいます。トルコ語クラスのために宿題の単語を調べていて、いつのまにか、あ、これも面白い発音だ、と面白がっていて一向に宿題が終わらないこともしばしばです。たとえば、「父」は、トルコ語で、「ババ」です。「母」は、「アンネ」。その結果(?)父方の祖母は、その単語を組み合わせて「ババアンネ」となります。ちょっと悲しいところでは(?)、「娘」は、「クズ」です。他にも、「宇宙」は「ウザイ」と発音し、たとえば、「熊」は、「アユ」と発音し、発音だけだと全然強そうなイメージが湧きません。
     最後に、ちゃんと役に立つトルコ語をいくつかご紹介します。
     「こんにちは」は、「メルハバ」(Helloのような単語です)
     「これは何ですか?」は、「ブ ネ?」(旅行で使えそうです)
     「とても美しい」は、「チョク ギュゼル」(旅行に行って、素敵な/美しい人に会ったら)
     トルコ語を習いつつ、歴史をひも解けば一層楽しくなりそうです。
                                                    (事務担当 YN)                                                 

2014年3月

  • 事務所便り/第16回 『ひな祭り』

     旧暦で行う地域もあるようだが、我が家は3月3日。毎年娘の健やかな成長と幸せを願って飾るお雛様も、早十何回目・・・。3日が過ぎると天気の良い日を選んで、なるべく早く片付ける。と言うのも、「お雛様を早く片付けないとお嫁に行き遅れる」という言い伝えがやはり気になるから。
     なぜこのように言われるようになったのか。厄払い説・しつけ説・結婚象徴説等など諸説あるようだが、明確な根拠はないようだ。季節の節目が変わったのに、だらだら出しっぱなしにしておくのはいかがなものか・・・ということからも言われるようになったのか。
     でも、直ぐにしまえない場合は、お雛様を後ろ向きにして飾り「お帰りになった」「眠っていらっしゃる」と解釈する方法もあるようだ。飾ったのはいいけれど、片付けるのがとても億劫になってきたこの頃。来年はこの手を使ってしまいそうだ・・・。
                                                    (事務担当:SS)

2014年2月

  • 事務所便り/第15回 『新婚生活と断捨離』

     昨年末から始まった新婚生活ですが、御多分に洩れず我が家もこまか~いことで折衝が発生しては折り合いをつけつつ、まだまだ地固めがつづく日々。
     やましたひでこの著書を読んでいないながら「断捨離」に共感している私としては、
           断=入ってくる要らない物を断つ
           捨=家にずっとある要らない物を捨てる
           離=物への執着から離れる
    を実践したいのだけれど、夫殿いわく「この(破れ)毛布がないと寝られへん!」のですね。ええ捨てませんよ、はいはい。でも、もういいかげん洗濯させてちょうだい。
     彼の中では、
           断りなく
    (ボロでも)捨てたら
           離婚するからね
    と変換される「断捨離」。理想的なモノすっきり生活への道のりは遠いようです。
                                 
     (入所2年目の特許技術者/内外事務 AN)

2013年11月

  • 事務所便り/第14回 『廣田事務所の明と暗』

     お父さんは、最近、ドライアイにもかかわらず、すぐ涙目になります。スポーツを見て涙し、ドラマを見て涙し、人生振り返っては涙します。
     事務所にもまた、ドラマがあります。
     代理人としての仕事をやるようになって、まだ5年ちょっとの駆け出しですが、かつてこんなに仕事をしたことがあったかしら。長い間、人の集団の中で仕事してきたけれど、かつてこんなにみんなが協力してやったことがあったかしら(いや、ない)。皆がいたからここまでやれた。皆がいるからこれからもやれる。
     うるるる・・・・。
     ウルルといえば、オーストラリアにある地球のへそ。へその緒はお母さんと胎児を結ぶ掛け替えのないパイプ。特許事務所は企業(人)と企業(人)を結ぶパイプ役。
     特許と掛けまして、貧乏人と解く。その心は、どちらも、真似(マネー)できない。
     儲けるのはたやすくありません。
                                                     (東海 裕作)

2013年9月

  • 事務所便り/第13回 『思い出の味』

    9月になっても日中の暑さが弱まらない今日この頃、冷たいものでのどを潤したくなる機会がまだまだ多いことでしょう。

    さて、皆さんには思い出の飲み物というのがありますか?
    「これを飲むと学生時代を思い出す」や「これは母の味、我が家の味だな」などなど...。
    私には500ml紙パックのレモンティーがその一つです。これは中学高校時代にとてもよく飲んでいたもので、毎日と言っていいほど飲んでいました。これを飲むと、学生時代の授業風景や体育の後の喉の渇きなど、とても鮮明に思い出されます。
    この1パックをどうやって放課後までもたせるかを友達と真剣に話したりもしていました。
     
    今でもときどき無性に飲みたくなって飲みますが、あの頃程おいしく感じられないのは、味が分かる大人になったのか、あの甘さをおいしいと思えないほど年をとったのか。

    美味しいと思えても思えなくても思い出の味は忘れたくないなと思う今日この頃です。
                                                   (事務担当 FO)

2012年6月

  • 事務所便り/第12回 『競争社会』

     先日のゴールデンウィーク、東京ディズニーランド行きの格安バスツアーにおいて痛ましい大事故が起こったのは記憶に新しいところです。この大事故は運転手の居眠りにより引き起こされた事故のようですが、その根本的な原因は、「格安」というキーワードに隠されているのかもしれません。
     さて、この「格安」ですが、もちろん我々の特許業界においても存在します。弁理士数が急増しクライアント獲得のためにそうせざるを得ないのかもしれませんし、「格安」に対する需要が多いことからその要請に応えるためにそうしているのかもしれません。価格面を含むこのような各事務所間の競争はクライアントにとってメリットがある反面、あまりにこの競争が行き過ぎると、業務遂行に無理が生じ、上記のバス事故のような人命を失うといった取り返しのつかない大事故ではないにしても、クライアントが思いもよらない大きな不利益を受ける可能性も否定できません。
     ところで、当事務所はといいますと、個人的には、「格安」という価格に重点をおいた事務所ではなく、「質」に重点をおいた事務所であると認識しています。私が入所した10年前に比べて、人員もより充実し、業務の質もさらに向上しているように感じます。また、事務所の取り扱い件数も増加していることからしますと、クライアントから一定の評価を得ることができているものと思われます。
     今日の厳しい競争社会の中、「格安」を売りにする事務所、「高品質」を売りにする事務所等、様々な事務所が存在しますが、最終的にはコストパフォーマンスが高い事務所が成長していくことは明らかであり、今後は事務所の選別がさらに進むことが予想されます。
     私自身にとっては、この便りの投稿が自分自身の業務について再確認するよい機会となりました。今後とも、クライアントの満足が得られるよう、コストパフォーマンスを常に意識して業務に取り組んでいきたいと考えています。
                                               (11年目の弁理士T)

2012年5月

  • 事務所便り/第11回 『スチームオーブンレンジ』

     私が幼稚園の頃、将来の夢は「コックさん」と「大工さん」でした。理由は、コックさんになれば毎日美味しいものが食べられるし、大工さんになれば自分の好きな家を建てて住むことができるからです。子供らしい発想でいいですね。残念ながら、現在は特許事務所での勤務ということで、夢とはかけ離れた仕事をしています。
     「コックさん」にはなりませんでしたが料理は好きなので学生時代は自分で料理することもありました。また、居酒屋のバイトで厨房を手伝った際に料理長から少しずつ料理を教えてもらいました。そのため、美味しいかどうかは別として一応簡単な料理は作ることができます。
     さて、先日電子レンジが欲しくて電気屋へ行くと、一目ぼれした電子レンジがありました。“スチームオーブンレンジ”です。高温の加熱水蒸気で調理することができるので、普通にレンジで温めるだけでなく、焼き物や揚げ物もできるというもの。いつも高額の買い物をするときは、欲しいものがあっても一度帰ってじっくり必要かどうか考えてから買う貧乏人性格なのですが、今回は思わず衝動買いをしてしまいました。先日、さっそく焼き魚にチャレンジ。こんがりと皮の表面が焼けてパリっとして、身はすごくふっくらとして、とても美味しかったです。今後は油を使わずに“鳥の唐揚げ”にもチャレンジ予定です。最近おなかが出てきたので、“揚げ物控えめ”を意識していましたが、やっぱり揚げ物も食べたくなり、根性無しの私はつい揚げ物を食べていました。そんな中で、この調理方法なら油を使わないから低カロリーのはずです。ダイエットにもつながればとひそかに期待しています。
                                               (国内担当 S.F)

2012年2月

  • 事務所便り/第10回 『風邪の予防

     ついこの間お正月を迎えたと思ったらもう節分。
     子供の頃、父が家中の窓を開けて「鬼は外、福は内・・。」と大声を張り上げて豆まきをしていた。その福豆を年の数より一つ多く食べた記憶があるが、どうやら最近では福豆よりも恵方巻きが主流であるらしい。また、父は年明け上野の鈴本演芸場で開催される「落語協会初顔見世興行」の寄席に行くのを毎年楽しみにしていた。初笑いで新しい年の幕が明ける。父にとってはどちらも家族の健康と無事を祈っての年初めの大切な恒例行事だったのかも知れない。
     「えー風邪が流行っていますが、風邪の予防には4つの条件があるそうです。人混みは避ける、ストレスを溜めない、ビタミンの補給、睡眠をとるーってんですが、それには寄席にくるのが一番!!寄席は適度な混み具合だし、ストレスなんて溜まるわきゃない。ビタミンは売店のジュースで補給できるし、睡眠にいたっては寄席ではたーぷりとれますから。」
     おあとがよろしいようで・・・・・・。
     皆様どうぞお風邪など召しませぬように。                  
    (事務担当 K.K)

2012年1月

  • 事務所便り/第9回 『花さそふ』

     特許技術者兼国内事務担当のNです。文才を買われて(くじ引きで)早くも二回目の登場です。
     さて、第9回は新年最初の更新となりました。そこで今回は新年らしく、百人一首の第9番のお話。
      『花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに』
     いわずと知れた小野小町の名歌です。
     学生時代を思い返せば、「世」「ふる」「ながめ」と掛詞になっており、『桜の花の色が、長雨がふりつづく間に色あせてしまった』という意味と、『私の容姿が、物思いにふける間にすっかり衰えてしまった』という意味があると習ったような気がします。
     この歌は、絶世の美女と言われた彼女だからこそ詠める歌である一方で、重要な教訓も残してくれています。すなわち、早い時の流れの中で、過ぎた時間を取り戻せないことを後悔している歌でもあるわけです。
     この一年、「いたづらに」過ごさないように気を付けたいものです。
      (特許技術者2年目:NN)

2011年12月

  • 事務所便り/第8回 『氷無し牛乳』

     その日は週末で、妻と二人の子供を車に乗せてどこかに出かけることになった。3歳の上の息子はここ1年半ほど恐竜にはまっており、彼の希望により行き先は博物館に決まった。博物館に入り、ティラノサウルスのブースが近付くと、彼は私を振り切って駆け出して行った。私がそのブースに着くと、彼はガオーッ、ガオーッ、ドシン、ドシンなどといいながら、こっちを見て足踏み運動をしている。ティラノサウルスにしてはずいぶん迫力がない。
     ひとしきり展示を見ると、お腹が空いてきた。いつもは館内のレストランを利用しているが、0歳の下の娘を背負った妻が近い場所がいいと言うので、その日は館内のカフェに初めてチャレンジすることになった。妻はハヤシライスなどと共に、息子用の飲み物として牛乳を注文し、「氷無しで」という一言を付け加えた。妻は息子がお腹をこわすといけないということでいつも氷を無しにしているのだが、これは少し過保護かもしれないなどと考えていると、店員が氷無し牛乳をこちらに差し出した。見ると、透明のプラスチック製のカップに入っている牛乳の量が明らかに少ない。コップの高さのわずか4分の1程度の高さである。いったいこれはと思っていると、店員はそれを察したのか、氷を抜くと牛乳の量はこの程度なのだと説明した。他の客との公平性を考えればそうするのも無理はないとも思ったが、飲みかけの牛乳のように見えて何だかわびしい。しかし食べ終わる頃にはそんなこともすっかり忘れて、また息子と恐竜の骨を見て回った。
     疲れ果てて駐車場に戻り、車を数分走らせると、息子はもうチャイルドシートの上で寝息を立てている。子供はのんきなものである。私が眠気を振り払いながら運転し、ようやく家の付近までたどり着くと、妻が近所のケーキ屋に寄ってくれという。理由を聞くと、息子が昼間の間、おむつ無しで過ごせるようになったことを祝うからだという。私の誕生日プレゼントがペンディングされているのは2年だったか3年だったか、記憶も定かでない。
     車を降り、しばらく歩くと、葉がすっかり落ちたモクレンの脇にケーキ屋が見えた。みんなでケーキ屋に入り、ケーキを選んでから脇のテーブルに座ると、妻がまた氷無し牛乳を注文した。しばらくすると、ウェイトレスが来て、それぞれのケーキとドリンクをテーブルの上に置いていく。モンブラン、アップルパイ、ショートケーキ、ホットコーヒー、ホットミルクティー、氷無し牛乳。そこで少し目が覚めた。氷無し牛乳が、大きめのガラスのコップになみなみと注がれていたのである。気をよくした私はケーキを頬張り始めると、半分ほど食べた頃だろうか、突然、バタンという音がし、一瞬の間をおいてパリンという音がした。顔を上げると、ほんの少ししか減っていなかったはずの氷無し牛乳のコップが、床に落ちて砕けていた。テーブルも息子のズボンも牛乳で濡れ、床には牛乳とガラスの破片が散らばっている。泣き出した息子につられて娘もすぐに泣き始めた。泣きわめく息子のズボンを脱がせ、椅子を拭き、相変わらず泣き止まない息子に今度は予備のおむつを履かせる。その間中、息子と娘は泣き通しで、てんやわんやの大騒ぎだ。
     なんとか落ち着きを取り戻し、残りのケーキを食べることになった。さきほどの気分の良さは完全に吹っ飛んで、なんだかみじめな気分である。頭の中では、なんだってこんなことになってしまったんだという考えがぐるぐる回って離れない。すると妻が、ウェイトレスに、代金払いますので新しい氷無し牛乳をくださいと言った。私は内心、そんなことをしてもコップを割る前の気分にはもう戻れないし無駄だと思ったが、言い争う気力も残っていなかったので黙っていた。
     しばらくすると、ウェイトレスが新しい氷無し牛乳を持ってきた。ウェイトレスはそれをテーブルにおくと、代金は結構ですと妻に言った。妻は恐縮し、いえいえ払いますと言った。たったこれだけのやりとりではあったが、私はそれを聞いて、それまで沈んでいた気持ちが急に晴れていき、さっきまでのみじめな気分が消えていくのを感じた。
     今度は無事食べ終わり、会計を済ませると、下はおむつ一丁という姿の息子がケーキのショーケースに顔を張りつけている。どうやらまだ食べるつもりでいるらしい。ちょうどそこへ見知らぬ母娘が店に入ってきて、右から左へとケーキを眺めていき、その途中で、動きがぴたりと止まった。息子のおむつに視線が釘づけになっている母娘を横目に、私は息子の手を引いてドアに向かうと、さきほどのウェイトレスがドアの近くでお辞儀をしている。私はゆっくりと店を出ると、空を見上げ、今日見たそれぞれの氷無し牛乳を思い浮かべながら、その順序に感謝した。モクレンの枝の向こうに連なっているひつじ雲が牛乳色に見えた。
                                            (弁理士7年目:M.H.)

2011年11月

  • 事務所便り/第7回 『読書の秋』

    「かんじんなことは目には見えない」―20世紀文学を代表するサン=テグジュペリ『星の王子さま』は誰もが一度は読んだ名作である。児童文学とはいえ、奥に隠される深いメッセージは単に子供の本として片づけられない何かがある。この本の解釈として、王子さまのモデルは誰かということは長く議論されてきた。子供の象徴やイエス=キリストであるという多様な説の中に、筆者自身の投影であるという有力な説がある。王子さまの「本当に大切なもの」を知るなら体の死を恐れないという発言と、筆者の同時期の作品『人間の土地』における他者との関係の尊さを知るならフランス出兵も恐れはないとの発言とが合致していることから、王子さまは筆者の分身であると言われている。いずれにしても、本著は様々な視点から読むことができるだろう。王子さまに自分自身を投影することもできるかもしれない。かつての子供が大人になった今、読み返すごとに魅力が増していく、そんな本である。
    もう一度読み返してみてはいかがでしょうか。                
     (翻訳チーム Y.M)

2011年9月

  • 事務所便り/第6回 『酔人Mの世迷言』

    脈絡は覚えていない
    所内恒例のすだちパーティで
    春夏秋冬と聞かれヒルクライムと即答したら
    やっぱ泉谷しげるでしょうと諭された
    随分若い世代の女性なんだけどしぶいなあ
    帰りのホーム、そんなことを反芻しながら
    60年代、70年代は社会にパワーがあったんだなって思うのは歳のせい
    ついでにマイ・バック・ページ(妻夫木聡主演の映画)の主題歌ボブディランだったなって思いだしたのは酔いのせい
     
    季節のない街にうまれ  風のない丘に育ち ~
    それでも蝉しぐれがこおろぎの音にいつのまにかかわり、節電の夏から季節が秋に移ろう
    今年の秋はどこ行こうか 今年の冬はどこ行こうか ~
    明日(9月12日)は中秋の名月、とりあえず早く帰ろうか
    その前にdocketingしないと叱られる

2010年12月

  • 事務所便り/第5回『年の暮れ』

     さて、本年も残すところあとわずかとなりました。事務所だよりも今回、第5回をもって本年入所のメンバーは一巡となります。私は研究者から転身、平成22年4月に弊所に入所して、右も左もわからないところからのスタートでしたが、早くも本年が終わろうとしています。来年も、少しずつでも成長できれば、と思っています。科学技術に対して風当たりの強い昨今ですが、本年は小惑星探査機「はやぶさ」の帰還や日本人のノーベル賞受賞に沸いた一年でもありました。そして、12月24日には臨時閣議で2011年度予算案が決まり、2年連続で削減する方向だった科学技術振興費が菅首相の鶴の一声で2010年度を上回る金額への増額となったニュースは、関係者にはほっとするクリスマスプレゼントになったのではないでしょうか。特許の排他権としての価値から、科学技術、特に学術研究と特許は相いれないものとも認識されがちですが、ライセンスインによる事業化やライセンスアウトによる資金調達などにより、科学技術をサポートできる面も持っています。科学技術は国を支える柱の一つですので、上のような国等による支援と比べれば微力ではありますが、特許出願等の業務からサポートできれば嬉しく思います。皆さま良いお年をお過ごしください。来年もよろしくお願いいたします。
                                (1年目A.M.)

2010年12月

  • 事務所便り/第4回『つぶやき』
     
     みなさん、こんにちは。特許技術者兼外内事務担当の、T岡田です。分子生物学の分野で約10年間研究に従事し、今年の4月から弊所にて勤務しております。入所する前は、特許事務所のイメージとして「特許申請を希望する人の代理人」程度の理解しかありませんでした。実際はその通りなのですが、お客様である特許申請者(発明者)の意見や要望を汲み取りながら、法律やこれまでオープンとなっている情報と照らし合わせ、できるだけ広い範囲で特許を取得することが望ましく、そのためには自分の理解力はもちろん、お客様に親身に接して信頼関係を築くことがいかに大事であるかについて気づかされました。一方、特許は、国益の観点からみても非常に重要であり、外国から日本へ申請した特許も含め、公正且つ厳正に審査される必要があるため、審査官との共同作業の側面もあると思います。昔、プロ野球のヤクルトに在籍した元メジャーリーガーであるホーナー選手が、日本の野球に対して、「地球の裏側にもう一つの野球があった」と述べております。何時ぞやの日経新聞の記事に「日本、韓国及び中国の審査官が、審査基準が異ならないよう意見交換をした」とあったように、国によって特許の審査基準が大幅に異なるのは好ましくないように思われます。
                                                
      
    (特許技術者兼外内事務1年目:T岡田)

2010年11月

  • 事務所便り/第3回『3』
     
     事務所便りも第3回となりました。特許技術者兼国内事務担当のNです。
     今年3月まで大学院の博士課程に在籍し、博士号取得と共に4月から弊所にて勤務しています。知財の経験はおろか、社会人としての経験もないままに、生意気にも弁理士試験の合格を目指して試験勉強と仕事の両立を心がけています。前回の事務所便りでも語られておりますが、弁理士や先輩の補助は大変心強く、弁理士試験合格を目指すにも良い環境が整っている職場だと思います。
     さて、第3回ということですが、「三」という数字は「三人寄れば文殊の知恵」「石の上にも三年」と、日本人が好きな数字としてよく取り上げられます。特許法で言えば第三条は期間の計算について、いわゆる『初日不算入の原則』が記載されています。法に則った手続きをする以上、法定期間は常に意識する必要があり、実務において最も重要な条文の一つだと言えます。ちなみに、私が弁理士試験の勉強を始めるにあたり、最初に覚えた条文でもあります。
     試験勉強も事務所便りも、「三日坊主」にならなければ良いのですが・・・
                                               (特許技術者1年目:NN

2010年11月

  • 事務所便り/第2回『特許事務所に入社して』
     
     入所5ヶ月目で、現在外内事務を担当しております。私はこれまで研究職に従事しており、知財に関して全く知識を持たずに入所しました。そのため不安はかなりありましたが、先輩所員のサポートもあり徐々に仕事にも慣れてきたところです。
     外内事務とは外国の発明を日本の特許庁に出願するための手続きを行う仕事ですが、私は理系出身であることもあり、勉強も兼ねて明細書作成補助やチェックなど、技術内容に係る仕事もさせてもらっています。この仕事を始めて一番大変に感じることは、異なる分野の発明を素早く的確に理解する必要があることです。研究職に就いていた時は、研究分野は限られており、その分野に関する知識だけを身に付けさえすればよかったのですが、この仕事では同じバイオ系であったとしても医薬品、実験方法、食品などと分野が多岐に渡っていて、発明の内容を理解するのに苦労することもあります。ただ、入所してわずか4ヶ月ながら、研究職のままでは決して接することがなかっただろう研究分野に多く触れることができ、研究とは異なる面白さがあると感じています。
     ちなみに、化学系の博士号取得者(ポスドク含む)を募集中です。現在4名の博士号取得者が活躍中です。
                                         
      (事務1年目:
    ay

2010年10月 

  • 事務所便り/第1回『新興国と特許』


     近年の経済成長が著しい国を表す、”BRICs(ブリックス)”という言葉があります。ブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字をつなげた言葉で、広大な土地や豊富な資源、人口が多いことなどが注目されている新興大国の代表です。最近はアメリカやヨーロッパ等と併せて、これら新興国への特許出願が目立ち、特許の「未来への投資」という一面を実感することができます。BRICsが提唱されてから、今年で早10年。世界の投資家はポスト・ブリックスとして、NEXT11(韓国、バングラデシュ、エジプト、インドネシア、イラン、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、トルコ、ベトナム、メキシコ)やVISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)といった新たな可能性を模索しています。どんな国への出願依頼にも応えられるよう、今後も日々勉強を続けていきたいと思います。