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2018年7月

  • 事務所便り/第36回 目隠し図書

    「大人が、子供たちの小さな異常にまったく気付かなかったというわけではない。」
     これは今年の春、近所の図書館で借りた本の出だしの一文である。実はこの本、内容はおろか、題名も、表紙の装丁すら目にすることなく借りたものである。本はシンプルな包装紙に包まれ、一文のみが書かれた紙が貼られた状態で棚に並んでいたのだ。
     優れた作品は冒頭の一文から光っている、というテーマの企画で、このようにラッピングされた本がほかにも10冊程度、魅力的な一文を掲げて書棚に並んでいた。情報が限られているだけに、かえって想像力を掻き立てられ、どれも面白そうに思えてくる。迷った挙句その日は2冊だけ選んで借りて帰り、プレゼントのような気持ちで最初の包みを開いたところ、表紙は砂浜を女子高生が独り歩いている写真だった。これを目にしていたら自分ではまず借りないなと思ったが、読んでみると、子供たちが話す想い出を「預かる」のと引き換えにお金を渡す海沿いの「質屋」の物語だ。預けた想い出は質屋に置いていかれるため本人はその出来事を忘れた状態となるのだが、深い考えなしにお小遣い欲しさにくる子がいたり、つらい想い出を毎日預けていくことで学校に通い続けられる生徒もいたり。大人たちの知らない、大人たちには見えない思春期の(非)日常を切り取った、情景描写も美しい作品で、最後まで楽しめた。
     このテーマ棚を設けた図書館は、郊外の小さな市の図書館でありながら広々としている。二面ガラス張りで天井が高く開放感があり、児童書エリアも広く、ソファつきのDVD視聴覚ブースやパソコン利用席が設けられ、さらにカフェを併設するなど設備面が充実している。また折々の映画会、作家を招いての子ども向けや大人向けのお話し会、読み聞かせ講座といったイベントのほか、最近では、借りた本を印字し記録できる「読書通帳」のサービスを始めたり、中高生が自身のおすすめ本を紹介できるコーナーを設けたりするなど、足を向けたくなる企画や取り組みが豊富だ。
     ちなみに、私が勝手に「目隠し図書」と呼んだ先の企画はしばらく続き、棚から借りた3冊目の本の最初の一文は「耳をすますと、雨音とともに聞こえてくる下駄の音。」だった。こちらは時代小説かと思いきや、そうではなかったのだからまた面白い。
     夏休みの時期になると、今度は恒例の「福袋」が特設コーナーに並ぶことになるだろう。司書たちがそれぞれの袋にテーマを設け、選んだ本を何冊か入れてくれるのだ。もちろん、実際に借りてみないとどんな本が入っているかわからない。北海道の小さな書店が行っている「お任せ選書サービス」が人気で、全国から注文が寄せられているそうだが、本との出会いを「目隠し」や「お任せ」に委ねるのもまた楽しいと思っている。

                                                (外国事務 A.H.

2018年6月

  • 事務所便り/第36回 『日本発の画期的技術を世界へ

     現代の私たちの生活は、コンピュータ、飛行機、電車、自動車、携帯電話等々、様々な文明の利器による恩恵を受けています。しかしながら、現在世界で使用されているほとんどの文明の利器は外国(主として欧米諸国)で発明された物です。現在、世界で通用している日本発の独創的な技術はほとんど見当たりません。
     しかし、我が国は、古代以来様々な独自技術を開発し実用化してきました(例えば、麹を用いた酒、醤油、味噌等の食品の発酵技術、刀剣の鍛造技術、神社仏閣の建築技術、等)。特に明治以降、日本は、欧米の科学技術を積極的に研究、改良し、現在では、ロボット技術、精密加工技術、種々の素材・機械部品等、様々な分野で他国の追随を許さない技術を確立しています。例えば、世界の鉄道のレールは日本製がかなりの割合を占めているとのことです。また、米国におけるシェールガスの採掘に使用されているパイプは日本鋼管製のパイプです。多くの日本の中小企業は優れた製造技術を有しております。
     これらのことを考慮しますと、日本が世界に通用する画期的技術を開発する潜在力を有していることは間違いないと思います。実際に日本発の画期的技術の候補はたくさん存在するのではないかと考えられます。
     以下に、将来画期的技術として世界に広まる可能性があると思われる技術を私の独断と偏見により2、3ご紹介致したいと思います。但し、ご紹介します技術は、私が個人的に興味を持っており、日本から世界に広まって欲しいという私の強い願望が含まれていることを予めお断り致したいと存じます。
     
    1.KUMADAIマグネシウム合金
     
    KUMADAIマグネシウム合金は、熊本大学の河村能人教授が開発されたマグネシウム合金で、長周期積層構造と呼ばれる新しい構造を有し、「耐熱合金」と「不燃合金」の2種類があります。KUMADAIマグネシウム合金は、様々な種類がありますが、マグネシウムに亜鉛、銅、ニッケル、コバルト、希土類元素、カルシウム、アルミニウム等の金属から選択される複数の金属を混ぜて製造されます。KUMADAIマグネシウム合金の特徴は、軽量、高強度、高靭性、耐熱性、不燃性等です。
     このため、
    KUMADAIマグネシウム合金は、航空機、宇宙船、自動車、鉄道、工作機械、ロボット等の製造における構造材、部品等の素材として注目されています。また、KUMADAIマグネシウム合金は、アメリカ連邦航空局(FAAFederal Aviation Administration)の燃焼試験に合格し、現在ボーイング社との共同研究がなされているとのことです。
     
    更に、マグネシウムは人体に対する親和性が高く、アレルギーになりにくい上に、徐々に体内に吸収されるという特性を有するため、血管を広げるステントや手術時のグリップ等医療分野における用途も期待されています。
     
    KUMADAIマグネシウム合金に関する特許文献はかなりあります。興味をお持ちの方は、例えば、特許第3905115号公報、特許第4139841号公報、国際公開公報WO 2014/171550 A9公報等をご参照下さい。
     いずれにしましても、
    KUMADAIマグネシウム合金は次世代の新素材として極めて有望であることは間違いないと言えるでしょう。

    2.室温超伝導材料
     リニアモーターカーの開発が進み、現在、JR東海は2027年にリニア中央新幹線の開業を目指しているとのことです。しかし、実用化にはまだ解決すべき課題が多くあるとの指摘がなされております。その一つが、超伝導にするために液体ヘリウム(摂氏マイナス269度(約4ケルビン))を使用することです。「ケルビン(K)」は絶対温度の単位で、「ケルビン=摂氏温度+273.15度」の関係があります。現在の技術では、リニアモーターカーの軌条部分は常に液体ヘリウムで冷やし続けなければならず、しかも液体ヘリウムは気化して逃げてしまうので補給し続けることが必須となるため、多量の電気を必要とします。もし、現在の技術でリニア中央新幹線を開業した場合、東京-名古屋間の片道運賃は37万円程度になるとの試算がなされています。
     このため、室温(常温)超電導材料の実用化が強く望まれます。室温超伝導とは、転移温度(常伝導から超伝導へ変化する温度)が室温(約300ケルビン、摂氏27度)程度で超伝導になることを指しております。室温超伝導を示す材料の研究は盛んに行われており、室温超電導材料に関する特許出願もかなりなされているようですが、未だに実用化可能な室温超伝導材料は発明されていません。もし発明されればノーベル賞どころか、人類史上の一大革命になるかもしれないと言われております。
     過去になされた室温超伝導に関する出願の中で個人的に興味を持ちましたのは、特願平2-281995号の出願に係る室温超伝導誘導体ヘテロ膜の発明です。発明者の日野太郎氏は東京工業大学の名誉教授です。興味のある方は特開平4-1577783号公報をご参照下さい。この公報には、室温超伝導の基礎実験が記載されており、室温(302ケルビン:摂氏約29度)でも超伝導体の特性を示したことが記載されています。しかし、誠に残念なことに、この発明並びに日野氏のご研究は当該技術分野において注目を浴びることなく埋もれてしまったようです。
     リニアモーターカーの実用化のためにも、送配電技術の画期的な飛躍のためにも常温超伝導材料が日本から生み出されることを強く願わずにはいられません。
    3.吸熱性薄膜電池
     電池は私たちの日常生活の様々な場において利用されています。電池は、物質の化学反応または物理反応によって放出されるエネルギーを電気エネルギーに変換する装置を意味し、電池にはさまざまな種類があります。例えば、乾電池のように充電できない一次電池、鉛蓄電池のように充電可能な二次電池、陽極となる空気極(酸素または空気)、陰極となる燃料極(水素・メタノールなど)が電解質を挟んでサンドイッチ構造を構成する燃料電池、光起電力効果を利用し、光エネルギーを電力に変換する太陽電池、放射性同位体から放出される放射線のエネルギーを電気エネルギーに変換する原子力電池、など種々の電池が挙げられます。しかし、これらの電池はいずれも、電気エネルギーを得るために、化学エネルギー、太陽光エネルギー、原子力のエネルギー等何らかの他の形態のエネルギーを供給する必要があります。
     私が最近興味を持ちました電池に、誘電体超薄膜を用いた金属-誘電体超薄膜-金属(MIM)の構造を持った電源素子で、素子自体が持つ熱エネルギーを電気エネルギーに変換して、素子の温度が下がれば外部から熱が素子に流入し、素子の温度を上昇させるという原理により、周囲に熱がある限り永久に電力を外部に放出することができる電池です。即ち、この電池は吸熱性の電池なのです。私が知る限り、吸熱性の電池というものを聞いたことがありません。これを発明なさったのは、前記2項の室温超伝導材料と同じ東京工業大学名誉教授の日野太郎氏です。「周囲に熱がある限り永久に電力を外部に放出することができる」などと言いますと、いわゆる「永久機関」の発明ではないかと疑われるかもしれませんが、この発明は、応用物理学欧文誌刊行会発行の「Japanese Journal of Applied Physics Vol.35, Part 1, No.4A」に発表された論文に基づく出願であり、実験データも掲載されていますので、信頼性はあると言ってよいと思います。興味をお持ちになった方は、特開平10-12937号公報をご覧下さい。
     この公開特許公報によりますと、「[アルミニューム電極-ポリイミドLB(ラングミュアー・ブロジェット無極性超薄膜-金電極]および[アルミニューム電極-有極性LB膜-アルミニューム電極]のMIMを素子構造とし、素子の面積は約0.2cm2
    である場合についての実験では0.1V~1V程度の電圧を発生して電源として利用されることを示した。また素子から約2年間にわたって電力が連続的に発生している。この電力は素子内の熱エネルギーが電気的エネルギーに変換されていることを示す実験結果も得られている。」とのことです。
     この出願は、審判段階において不成立(特許が認められないこと)が確定しております。前記の通り、この電源素子の起電力は0.1V~1V程度とのことですので実用化には程遠いかもしれませんが、研究を進めれば実用化は可能ではないかと思われます。日野太郎氏が開発された吸熱性薄膜電池はこれまでの電池の概念とは異なる画期的な電池であると考えられますので、吸熱性薄膜電池に新たな光が当てられてその研究開発が進展することを希望しております。
     以上ご紹介致しました技術のうち、KUMADAIマグネシウム合金は既に世界的に注目されていますので、今後ますます応用研究や開発研究が進展することが期待されます。室温超伝導材料は世界中の大学、企業、研究所等において研究がなされていますので、これから10年以内に実用化可能な室温超伝導材料が完成するのではないかと予想されます(多分に個人的願望が入っておりますが)。日本から室温超伝導材料が生まれることを大いに期待しております。吸熱性薄膜電池は一部の研究者が注目しているようです。何らかのきっかけにより、吸熱性薄膜電池の実用化研究が日本で飛躍的に活発になることを夢見ております。自ら一翼を担うことができないのは残念ですが、日本発の画期的な技術が世界各地に広まること今後もわくわくしながら見守っていきたいと思っております。

                                  弁理士HT

2018年5月

  • 事務所便り/第35回 『庭園の管理

     東京から300km程度離れた実家に住む人がいなくなってから10年以上経過した。実家の管理のため、家族での小旅行も兼ねて年に何度か帰省してきたが、最初の数年間は敷地の管理について特別なことをしていなかった。やがて、敷地内の草木が生長し、弊害が顕在化してきた。公道からの実家の見通しが悪くなり、防犯上好ましくない状況が発生した。木の枝が屋根に届き、ハクビシンがその枝から屋根、家屋にいつの間にかできていた穴を伝って天井裏に侵入してきた。実家に到着した直後、縁の下に侵入していたタヌキと出くわしたこともあった。ハチが木の枝に営巣したこともあった。家屋の外の管理を怠ったため、野生動物に実家の実効支配を許してしまったと感じ、その原因の1つであると考えられる草木を刈り取ることにした。木の枝を払っていると、先祖が同様に枝を払った形跡に気付き、先祖も自分と同じ苦労をしていたことが窺われた。労力をかけて雑草を抜いても1月以上経過すると別の雑草が生長してしまうので、食塩を撒いてみた。しかし、効果は全くなく、除草剤を使用することにした。雑草は除草剤の散布によって枯れるのだが、相変わらず別の雑草が生えてくる。池の中央にある置き石の側面にも雑草が生長し、土が無くても根を張ってしまうたくましさに感心させられた。結局、動物の侵入を防ぐには、年に何度か除草剤を散布し、のこぎりで切り取った後に残っている切り株から生えてくる芽を毎年摘んで、植物を繁殖させない手間をかけ続ける必要があることがわかった。
     東京の自宅の駐輪場として使用しているスペースの石畳の隙間から雑草が生えてくる。実家で散布した除草剤の残りをそのスペースに散布しているが、実家がある地域よりも高温多湿な東京で植物は生長しやすく、雑草が枯れても1月もしないうちに別の雑草が生長してくる。東京の自宅近くに六義園、旧古河庭園、飛鳥山公園がある。いずれも広大で美しい庭園であるが、東京の自宅での雑草の生長具合からすると、除草剤を散布できない広大な庭園の管理に多大な労力が費やされていることは想像に難くない。六義園でカワセミを見かけたことがある。都内の庭園を訪れると、庭園の美しい景観と貴重な野生動物を惹き付ける環境を維持するには、継続的に人の手が入っていることに思いを巡らせている。
                                弁理士 M

2018年4月

  • 事務所便り/第34回 『水道管凍結事件

     先の冬、記録的な寒波で東京都心でも20㎝以上の積雪があった翌朝、練馬区の自宅マンションの水道管が凍結し、朝起きて顔を洗おうと思ったら水道から水が一滴も出ない、という事態に見舞われました。顔も洗えず、歯を磨くこともできず、これじゃ仕事に行けない・・・と途方に暮れましたが、しばらくして、7年前の震災の後、非常用にペットボトルの水を数リットル備蓄していたことを思い出し、朝の小さな非常時を無事に乗り切ることができました。

     備えあれば憂いなし。水を備蓄していた過去の自分を褒めつつ、同時に、せっかく備蓄しているのにその存在をすっかり忘れていた自分に呆れました。

     水以外にも東日本大震災後、非常時用に揃えたものがいくつかあるのですが、今回のプチ非常時の自らの慌てっぷりを反省して、いろいろ再確認、再点検してみたところ、非常食の賞味期限が切れていたり、携帯ラジオが行方不明になっていたり、ランタンの電池は、時計の電池がなくなった時に拝借して以来そのままになっていたりと、ひどい有様で、少し前に棚の奥から発掘した古いカセットコンロなどは、万一ガスが止まっても使えるから、と実家の家族がくれたものだったのですが、そんなことはすっかり忘れ、うちでは全然使わないし邪魔だから捨ててしまおうか、と検討していたところで、せっかくそろえた非常用グッズを危うく捨ててしまうところでした。

     毎年3月が近付くと、震災関連の報道も増え、ここ数年は記憶の風化が取り上げられることが多くなっていますが、震災そのものの記憶だけでなく、物理的な備えに対する記憶も風化させないようにしなくては、と反省させられた水道管凍結事件でした。
                                事務担当 AS

2018年3月

  • 事務所便り/第33回 『新年会

     弊所では、2月16日にお客様をお招きしての新年会を明治記念館で開きました。旧暦の1月1日にあたる当日は、昨年を上回る70名近い方々にご出席いただき、所員を合わせて100名近くが参加する盛況な会となりました。
     所員が受付、会場案内、ワインテイストの催しのコーナーでお待ちするなかお客様が次々と到着され、会場は早速ウェルカムドリンク片手に和やかな雰囲気に包まれました。冒頭に所長から日頃のご厚情へのお礼の挨拶と恒例の俳句の披露があり、続いて来賓の方から有り難いお言葉と共に乾杯のご発声をいただいて、宴の幕が開きました。会場では、お客様と所員が、また前回の新年会で顔見知りとなられたお客様同士が、料理やワインを手にして会話を弾ませる姿が見られ、新たな交流の場となったようです。私にとっても、久し振りにお目にかかる方々や初めてお目にかかる方々とお話ができ、特許出願の背景となる事業の近況をお伺いすることや、そのお人柄に改めて触れることのできる良い機会でした。おもてなしをするはずが興味深いお話を伺い、却ってこちらが楽しませていただき恐縮しているうちに、談笑の声が満ちるなか定刻となり、弊所中堅弁理士による会場を沸かせる絶妙の挨拶でお開きとなりました。お忙しいなか足をお運びいただいた皆様に感謝申し上げます。
     こうした集いを開くことができたのは、所員一人一人がお客様との間で大切に積み上げてきたものがあってこそだと思います。弊所では2年前に創立20周年を記念してパーティーを開きました。当時、私は入所4年目でしたが、その時も多くの方々にご出席いただいたのを覚えています。それから1年、次の1年と、弁理士、技術、翻訳、事務と役割は異なりますが、皆の仕事を通じたさらなる積重ねが今に繋がっていると感じます。私もその中の一人として、日々の仕事とそこから得られる発見や喜びを大切にする、そして今後の技術革新や社会の変化にも向かっていく弁理士でありたいと思っています。翌日、金メダルを取った羽生結弦のように力強くしなやかに。                                                               (弁理士S)

2018年2月

  • 事務所便り/第32回 『息抜き

     弊所の最寄駅は溜池山王ですので、徒歩圏内に国会議事堂、日枝神社、アークヒルズなどいくつか好きな散歩スポットがあります。
     特に気に入っているのは国会議事堂の周辺で、事務所から歩くと急な坂を上っていくことになるのですが、坂の上を見ながら歩いていると、晴れた日は青空を背景にだんだんと国会の建物が見えてきて改めて立派な建物だなと思わされます。周辺では季節ごとに梅や桜などの花が楽しめたり、晩秋には国会議事堂を囲むように植えられている銀杏並木が見事な黄葉を見せてくれたりします。建物の中では時期によって様々な喧噪があるのでしょうが、その周囲は静かなものです。
     国会の正面には洋風と和風の庭園がそれぞれ左右に広がっており、私が好きな和風庭園の方は、いったいどこから水を引いているのか(丘の上なのに、不思議です)、庭園内を小さな川のように水が流れていて、都心ではなかなか聞くことのできないせせらぎの音があり、緑も多いのでちょっと珍しい鳥が見られることもあります。洋風庭園は、奥まで行くと見晴らしよく眼下にお濠と皇居の広大な敷地が広がっていて、この先に桜田門があって、日比谷公園があってと風景を想像しながら考えていると、なぜか東京に住んでいることが嬉しくなるのです。
     周辺には官公庁がたくさんありお勤めの方も多いと思うのですが、お花見の時期以外は人もまばらでとてもゆったりした空間で、素敵な場所なのにみんな使わないなんてもったいない、と思いつつ、自分本位なことを言えば、そのおかげで豊かな息抜きができるので、このまま静かな場所であってほしいとひそかに願っています。
                (外国事務Y)

2018年1月

  • 事務所便り/第31回 『キャッシュレス化

    銀行の通帳を作らない人がいると聞いて驚いたのは数年前。

    今も変わらずペーパー派、そして現金派の私は明らかに時代の変化に乗り遅れつつある。
    スマホに替えたのも、周りが8割がたスマホに替えてからだった。

    おサイフケータイという言葉を聞いたのももう随分前のこと。
    最近では、仮想通貨、ビットコイン、フィンテック、デジタルマネーなど、何やら未来世界のような聞きなれない言葉を耳にすることが多くなり、ひょっとしてこれからの私の生活にも何か影響してくるのかなと心穏やかでいられなくなってくる。
    私が付いていけているのはクレジットカードまでで、スマホ決済やネットバンキングの世界にはまだ足を踏み入れていない。

    先進国の中で日本ほど現金が動いている国はないという。
    お隣の国中国ではすでに数年前からスマホアプリでほとんどの買い物やサービスの決済が完了するらしい。
    そんな中、中国ネット通販最大手のアリババが来春にも日本に上陸し、スマホを使った電子決済サービスを始めることが決まったという。日本政府も2020年の東京オリンピックへ向けてキャッシュレス決済を推進していくことを発表している。もう本当に近い将来、日本だって現金が動くことはほとんどなくなるのかもしれない。

    パソコンを使うようになった時、スマホに替えた時、何とかこれまでは時代の変化に付いていけたけれど、今度の変化には対応できるんだろうか?自分の老化のスピードと生活様式の変化のスピードを秤にかけて、何とかなるかな?大丈夫かな?と不安を感じたり打ち消したりしながら過ごしているこの頃である。                       (n)

2017年12月

  • 事務所便り/第30回 『ポインセチアの季節に思うこと

    街のあちこちでクリスマスの定番、ポインセチアを見かけるようになりました。もっとも、最近は10月頃からポインセチアの鉢植えが花屋の店頭に並ぶようになりましたが。
    私は、20代前半に、ポインセチアの苗を育てる農場で少しだけお世話になったことがあります。日差しが初夏を思わせるように眩しくなるゴールデンウィーク頃から、本格的な夏となる頃まで、親株からとった挿し穂を温室内のベンチ一面に用意したトレーに挿していきます。作業中には、挿し穂の葉が乾燥しないよう定期的に自動で霧が発生するようになっていて、その瞬間は涼しいのですが、何せ温室内のこと、少し経つと蒸し暑さが増し、温度計が40度を指すこともありました。当時を振り返ってまず思い出すのは、とにかく暑かった!ということです。他にも今思えば若さで乗り切った(?)ようなことがいろいろありますが、何よりすべてが目新しく、なんでも吸収しようという気持ちが上回っていたと思います。
    翻って廣田特許事務所に入所して何年も経った今の自分はどうなのか。入所時のフレッシュな気持ちはなくなってしまったとしても、仕事に対し前向きな姿勢でいるか、常に自分に問いかけていかなければ、と改めて思います。
                                   事務担当:KS

2017年11月

  • 事務所便り/第29回 『プチプチうらない』

     私はお菓子が大好きなのだが、最も好きなお菓子の中の1つが、「プチプチうらない」というお菓子だ。チョコレートとラムネの2種類あるが、私はチョコレート専門。
     これは、チーリン製菓という企業が販売していて、チョコを食べながら占いができる何とも楽しいお菓子だ(と、私は思っている)。パッケージのプラスチック部分を押すとアルミ部分が破れ、アルミ部分に書いてある占いの結果を見ることができる。結果は「◎」「○」「△」「×」の4つ。
     プラスチック部分は、1シート当たり18個あり、18個の項目で占いをすることができる。では、どのようなことが占えるかというと、「ともだち」「けんこう」「れんあい」などオーソドックスなものから、「なやみごと」「けっこん」「みらい」など若干ヘビーなものもある。(ちなみに、「みらい」で「×」が出ると結構悲しい。)たまに「なわとび」「はやおき」など、ものすごくピンポイントで占ってくれるものや、「ハッスル」「ジャンプ」など、これは「◎」が出たところで喜ぶべきものなのだろうか?と感じるようなものもある。
     私はこのプチプチうらないチョコが大好きすぎて、見かけたら即決で大人買いすることにしている。普段は優柔不断でオロオロ悩むタイプだが、こういうことに関して迷いはない。娘達と一緒に「やったー!うらないチョコある!買おう!!」と、買い物カゴにわらわらと入れる。知り合いには絶対見られたくないカゴの中身。(レジの人に見られるのも実はちょっと恥ずかしい。)
     大人買いと言っても、1シート20円くらいのものなので、20円でこれだけ楽しめるなんて、とても幸せなことだと思っている。この画期的(?)なパッケージは、意匠登録などされているのかしら・・・と気になって検索してみたが、見つけることができず。。。残念。
     ちょっと落ち込むことがあった日も、チョコを食べながらプチプチうらないをすれば、嫌な気持ちも忘れられる。かもしれない。世の中の、こんな面白い工夫に感謝。
                                   事務担当:M

2017年10月

  • 事務所便り/第28回 『アフリカの思い出
     

     ある夏の暑い日、突然、大使館勤務の話が舞い降りて来ました。
     当時特許庁に勤務していた私にとって、まさに晴天の霹靂。それ以前、特許庁職員が大使館に出向した例が全くなかったからです。任国は西アフリカのナイジェリア。ポストは経済担当書記官。現在のようにインターネットもなく、極めて限られた情報に基づいて、短時日で赴任を決断することになりました。
     大使館は、外務省職員と各省庁からの出向者との混成部隊で構成されています。多岐にわたる国家間の問題に外務省職員だけで対応することは困難だからです。とはいえ、他省庁からの出向者には、語学の高いハードルがあります。外交に関する専門知識を欠いています。理系の私には、「経済」も新たな挑戦でした。しかし、半年間にわたる外務研修所や各省庁での研修など、準備を整えるシステムが確立されていました。
     ナイジェリアはアフリカの大国です。OPEC加盟の産油国で、GDPは2位のエジプト、3位の南アを大きく上回って、アフリカ最大。人口もアフリカ最大で、2位のエチオピアの2倍超の2億人(2016年現在)。面積は日本の2.5倍。南部のギニア湾沿いは熱帯雨林気候、北部はサハラ砂漠の南縁から続くサバンナ気候。国土の5割超が可耕地で、3割が耕作されています。約250の部族がそれぞれの言語を持ち、英語が公用語。宗教面では、キリスト教徒が南部、イスラム教徒が北部に多く居住しています。
     私の在勤当時(1978~79年)、ナイジェリアは原油価格の高騰で財政が大いに潤い、活況を呈していました。ナイジェリア政府の多くの職員が、日本に学んで工業化をなしとげたい、との決意を熱く語っていました。当時、米国への留学生の数は、ナイジェリアが第1位。一族の優秀な子弟を親戚中で援助して海外留学させる風習もあります。在勤中、他のアフリカ諸国を訪問する機会も少なからずありましたが、ナイジェリア人のアグレッシブな気質は、群を抜いていると感じることが多々ありました。国の発展の条件に恵まれているといえるでしょう。
     もっとも、インフラはまだまだ整備途上。治安も悪く、武装強盗が多発していました。しかし、強盗の目的は金品にあることが明確で、おとなしく目的物を引き渡せばそれで終了、との暗黙のルールがありました。酷暑に加え、停電、断水、輸入制限による物資の欠乏など、日常生活も楽ではありません。このような中で、同国在住の外国人は、不思議な連帯感を共有していました。
     ナイジェリアでの私の住居は大使館の敷地内にあり、すぐ近くにナイジェリア陸軍の宿舎がありました。同国の軍隊は、ビアフラ戦争の結果、北部出身のイスラム教徒が多数を占めており、宿舎内のラウドスピーカーから、毎日数回、兵士の礼拝のためのコーランが高らかに鳴り響いていました。スピーカーが鳴り始めると、付近を歩行中の人がその場に絨毯を広げ、携帯容器の水で手と口を清め、敬虔に礼拝する姿を毎日のように見かけました。その一方、市内にはキリスト教の立派な教会もあり、宗教を巡る対立はまったくありませんでした。飲酒するイスラム教徒や、複数の妻を持つキリスト教徒がいるなど、宗教に寛容な国との印象を強く持ちました。
     私の離任後、同国の発展は停滞しました。原油価格の下落により債務不履行が発生したこと、輸入代替産業の育成をコアとする同国の発展モデルが、その後のグローバル化の進展にそぐわなくなったことなどのためです。
     しかし、同国は、近年再び成長を開始し、上述のとおり、アフリカ最大の経済力を維持しています。
     離任後、同国を再訪する機会がないまま現在に至っていますが、今でも新聞やインターネットで「ナイジェリア」との文字が目にとまると、記事に引き込まれます。
     残念ことに、近年、イスラム過激思想がサハラ砂漠をはるばる越えてナイジェリアにも波及して、イスラム教徒の多い北部で「ボコハラム」と名乗る過激集団がテロ行為を繰り返しています。
    あの宗教への寛容性は過去のものになりつつあるのだろうか? 願わくは、工業化だけでなく、宗教に対する寛容性も日本から学んでもらいたいものである。
                                (弁理士K.M)

2017年9月

  • 事務所便り/第27回 『C'est l'arbre qui cache la forêt』

      フランス語の学校に通い始めてもう何年になるか。
      横幅7~8メートルはある黒板に古い教壇が置かれた教室の並ぶクラシックな学校だ。
      今履修しているのは仏訳のクラスで、生徒は事前に渡された和文を次の回までにフランス語に訳していき、授業で先生が生徒の訳を、1文ずつ解説を交えつつ添削するという内容である。
      先生は、「さあ、最初は誰からだ?」と生徒の自主性を重んじるため、黒板に出て自作の文章を披露する人間は自然と限られる。その中で私は、静寂の空間に身を沈めたままでいることが苦手な性格が災いし、自分の訳に全く自信がないにも関わらず、毎授業、複数回、黒板上に自分の訳をさらけ出している。
      ところで、フランス語を勉強し始めてから、英語ってなんて楽なのだろうと思うことがある。
      フランス語は英語と比べ活用の機会が多すぎるのだ。
      動詞の活用は何より、名詞、代名詞、形容詞がコンテキストに沿って次々変化する。
      動詞に至っては、その名も[La Conjugaison]というまるまる一冊が動詞の活用で埋め尽くされた本が存在するほどだ。友人はこれを「悪夢」と呼んでいた。表紙はポップでかわいいのだけれど。
      話を授業に戻す。
      黒板に向かう際に気をつけたいのが前の人が書いた文章からのバトンタッチであるということだ。それに前の文章で先生が添削しながら解説した点は、続く自分の文章では改善したいと思うと、ノートに書かれた自作の文章をただ何も考えずに黒板に模写していくわけにはいかない。
      例えば自分が三人称主語で作文していたとしても前の人の文章が一人称であれば合わせた方がいいだろう、前の文章で選択された単語や先生に”c’est le mieux”と言われた表現があれば引き続きそれらを使う方がいいだろう、とあれこれ思いながら、黒板の前に出て、左手にノートを持ちつつ、体を右に移動しながら言葉を連ねていく中で、「あ、そういえばここはさっきこう言われたな」、とノートに書かれた自分の文章に黒板上で修正を加えていくのだが、ここで文法上の罠から逃げられたことがないのだ。
      一つ何か修正を加えるとそれに伴い、登場する文字それぞれの活用や変更に配慮しなければならないのに、黒板と至近距離で向かい合っているうちには気付かない。
      一文書き終え、黒板から自分の席に戻り、一息ついて、今書いた自分の文章をざあっと俯瞰した瞬間。
      あ。「複数のSをつけ忘れた」「代名詞を変えるのを忘れた」「あの動詞は活用するんだった」「冠詞の修正を忘れた」「アクサンを付け忘れた」などなど、面白いほどにいくつもの文法エラーが一気に目に飛び込んでくるのだ。
      この事象が、ある意味、依頼を受け手続完了まで道筋を立て手続を進めていく今の仕事に似ている、と先日授業に出ているときにふと思った。
      単願が共願になったり、出願前に実は公開されていたことが分かったり、出願人の住所や印鑑が変更されていたり、出願人が実は減免条件に当てはまることが分かったり、何かと同時に分割出願することになったり、突然委任状が必要な手続が発生したり・・・と最初に予想していたスケジュールに変更が入ることはよくある。一つ何かが変更になったらそれに付随して必要となる手続きが増えたり変更になったり。私が組み立てるフランス語の文章のようだ。
      一つの手続が変更になったそのとき、予定していた他の手続は“活用”しないのか。変更を加えた筋道を“黒板から遠ざかって”眺め直してみる。変更するたびに眺め直す。
      木を見て、森を眺める。ついでにその先につながる空まで眺めてみる、その冷静さは、急いでいたり変更が多ければ多いほどますます必要なのだと改めて考えた。
      木が森を隠してしまうものらしいから。
                                  (国内事務  Y.H)

2017年8月

  • 事務所便り/第26回 『旅行気分

     特許庁のホームページに隔月で掲載されている広報誌「とっきょ」という雑誌には、特許庁の最新の取り組みや様々な企業の特許が紹介されており、毎回興味を持って読んでいます。
     なかでも、地域団体商標制度に登録されている全国の特産品を紹介するコーナーで、これまで旅行で訪れて食べた事があるものが紹介されていると、とても嬉しい気持ちになります。初めて目にするものが紹介されていると、その特産品や土地を調べて、思いを馳せたりもします。
     東京には、地方自治体のアンテナショップが多数あり、デパートでも物産展が頻繁に開催され、旅行をしなくても全国各地の特産品を購入する事が出来ますし、インターネットでのお取り寄せも簡単に出来るようになりましたが、やはりその土地の空気の中で、現地の人と触れ合い、名物を食べたりお土産を選んだりすることには敵いません。
     とはいっても頻繁に旅行は出来ませんので、便利な時代の恩恵を受けて、今日も東京で旅行気分を味わいます。


    (事務担当:F)

2016年11月

  • 事務所便り/第25回 『ごみ捨て

    内輪の話で恐縮ですが、先日、弊所の入居するビルのごみ捨てのルールが変わりました。今までは「燃えるごみ」「燃えないごみ」「ビン・缶」「ペットボトル」といった仕様だったところ、「燃えるごみ」と「燃えないごみ」が再編され、今後は「紙ごみ」「それ以外」といった分別になるのこと。とはいえ、今までは「燃えないごみ」用の箱が置かれていたスペースに「それ以外」用の箱が置かれてしまったがためでしょうか。未だに「蜜柑の皮は…燃えないごみ?」といった混乱が生じています。
    特許の世界では、制度の改正が細やかにかつ比較的頻繁になされるように思います。そちらでは混乱をしないよう、理解していかねばならないと思います。

    (事務担当:S)

2016年10月

  • 事務所便り/第24回 『東京の街

     朝の満員電車で、隣の女性とのわずかな隙間に紙袋にも入っていないコーヒーのカップを持っている彼女の手に気がついた。もし何かの拍子にこの狭い空間でコーヒーをこぼしたらどうするのだろう。
    30年ほど前欧州のある都市で生活していた私は、街で歩きながら、地下鉄に乗りながら、ものを食べたり飲んだりしている人々を多く目にし、当時の東京では見たことのなかった行儀の悪さに驚きつつ、東京でそういったことがないことを日本人として誇りに思ったものである。しかし、それからそんなに時を経ることなく、同じような光景を東京でも見ることになろうとは当時の私は思いもしなかった。
    今、公共の乗り物・場所で、他人の存在をあまり意識することなく、自分の家か部屋にいるような様子で過ごしている人たちを目にしない日はあるだろうか・・。

    先日、リオデジャネイロから引継いだ五輪旗とパラリンピック旗の都庁での掲揚に偶然居合わせました。前回の1964年のオリンピック開催時、東京では準備のために区画整理、首都高などの道路整備等さまざまな大きな変化、また、外国から訪れた人たちに美しい東京を見せたいという気持ちから、街を綺麗に清潔にしようという人々の思いが行動や形として生活の中に見られたそうです。これから4年後のオリンピック開催までの間、この東京では更に建物、交通含めいろいろな計画が進められ、大きな街東京となる事でしょう。
    この大きなイベントを前に、私も含め東京が「田舎」そのものであるものたちにとっては、今まであった東京の良い部分を残しそれを大切にしつつ、また変化を反省しながら人に優しい街、前に進む街になっていくきっかけとなってほしい…と、街を歩いているときふと思う今日この頃です。

    (事務担当:ef)

2016年8月

  • 事務所便り/第23回 『年を重ねた弁理士(SO)のつぶやき』

     読売新聞の日曜版に、”名言巡礼“という記事が連載されています。大分以前の日曜版に、手塚治虫先生の”名言巡礼“が載せられていました。
     先生の名言“漫画家になりたいのであれば、漫画を勉強しなさんな”
     この言葉は、先生が、漫画を通して描くべきものを名言として残されたものと思われます。現在では、3Dとか、美しい画像とか、強烈なアクションとか、形だけを追い求め、評価される傾向がありますが、先生の名言はそのような傾向に、一石を投じられているものと思われます。
     そんな風潮を、無理やり特許の世界に結び付けるのも恐縮ですが、昨今の特許制度の運用は、形だけにとらわれて、制度の本質を見失っているのではないかと危惧するものであります。
     特許法自体も、毎年の法改正により、やたらと特許庁目線の処理軽減のための条文が盛り込まれ、特許庁や、裁判所の判断も、「基準」を作って、安易に形に当てはめようとする傾向があります。なお、全てがそういうことでないことはもちろんのことです。
     昨今も、昨年、出された最高裁のいわゆる“プロセス規定の物の発明(クレーム)」について、特許庁で審査基準が作成され、そのような発明の特定が許されるのは、「不可能・非実際的事情が存在するときに限られる」との運用が始められていますが、法律上も、過去の解釈、運用においても根拠がなく、最高裁の判決があったというだけで、理由が見当たりません。また、審査基準が改定され、判断が緩和され、「食品の用途発明」についても特許が認められるとの審査の運用が始められていますが、もともといかなる理由で「食品の用途発明」は制限されていたのか、いかなる理由で緩和されたのか根拠が見当たりません。しかしながら、何れの場合も、理由のない、その場対応の場当たり的なように感じられます。
     このような昨今の特許制度の運用を考える時、もう一度制度の基本に立ち返って、制度が何を目指すのか、何を基本とすべきものかを考えた上で、実務を構築する必要があるのではないかと思われます。そんなときに、“温故知新”の格言も、心に刻むべきかもしれません。
     “年を重ねた弁理士のつぶやき”としては、少々長く、理屈っぽいように思われますが、手塚治虫先生の”名言巡礼の言葉は、漫画の世界だけではなく、我々の特許の世界にも、一つの指針を投げかけられているように思われます。

    (弁理士:S.O)

2016年6月

  • 事務所便り/第22回 『国民の祝日』

    国民の祝日が,1年に何日あるかご存知でしょうか。
    国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第43号)が施行され、平成28年から、8月11日は、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」日として、国民の祝日「山の日」となりました。
    まだ記憶に新しい先月のゴールデンウィークも,憲法記念日やみどりの日,こどもの日と国民の祝日からなる連休です。
    この国民の祝日は,1年に16日あるそうですが,6月には1日もないのです。
    これから梅雨時…。山の恩恵に感謝する日があるのなら,雨の恩恵に感謝する梅雨の日があってもいいのかな?と思ってはみたものの,せっかくの祝日,出かけたいのに雨…じゃ,感謝できないかもしれない…!
    梅雨の日はあっけなく私の中で却下された。

    (事務担当:A.I)

2016年5月

  • 事務所便り/第21回 『こどもの日に思うこと』

    「柱のキズはおととしの~♪」。これは「せいくらべ」という皆さまご存じの、こどもの日のせいくらべの情景をうたったものだ。自分の子供時代を思うと、今の子供は一見恵まれているようで、大変だなあ、と考える。
    私の子供のときは、近所に子供が多く、夕方遅くまでカンケリやなわとびをしたり、草むらで首飾りをつくったり、何かの実を集めたりと、とにかく遊びまわっていたものだ。ときには遊びに夢中になって、「ドブ」に落ちるといった気の毒な事態も発生した。大人も子供も大騒ぎの、鮮烈に記憶に残る子供時代の大事件だ。(ちなみに、私ではありません)。
    今は子供の数も少ないせいか、子供が大勢集まって歓声をあげるといった光景を目にすることが減った。街は整備され、遊びも変わったし、家庭の様子も変わった。小学校から受験に備える家庭も増えた。一方では、こどもの6人に1人が貧困だという。
    日本人は戦後、世界から手本とされる復興を遂げてその後も豊かな社会を築いてきたはずだが、それにつれて人とひととのつながりが薄れて、もはや身内、親族といった集団では家庭の庇護からこぼれ落ちそうになる子供を救うことが難しくなったように思える。皆が自分のことで精いっぱいなのだが、昔と変わらない子供の笑顔を見るにつけ、もっともっと上ばかりを見るのではなく、温かい人の手の温もりを大切にしようと、こどもの日に思った。

    (翻訳:RS)

2016年3月

  • 事務所便り/第20回 『事務所創設20周年を迎えて』

     特許庁を退職後、1996年に八丁堀に「廣田特許事務所」を開設してはや
    20年が経ちました。
     開業当初は仕事の依頼がほとんどありませんでした。その当時、将来への
    不安と期待が入り交じっていた頃の八丁堀での俳句です。
       隅田川 春の潮(うしお)が 逆上る
     そんな折、四国徳島の充填包装機械の大手の四国化工機株式会社と顧問契約
    を締結することができました。徳島出身の私は地縁のありがたさをしみじみと
    かみしめたものでした。徳島と香川の県境の阿讃山脈を眺めての一句です。
       春うらら 讃岐は丸き 山つづく

     その後事務所を赤坂に移し、あっという間に月日が流れ過ぎていきました。
     その間、幸いにもクライアントに恵まれ、たくさんのお仕事をいただきました。
    ですから、明け方まで仕事をしたことも多々ありました。夏の夜明けの赤坂の景です。
       短夜や ここ赤坂の 明け鴉
     また例年、年の瀬が迫った年末まで仕事をすることも多々ありました。
       一仕事 終え歳末の 街に出る

     しかし、特許事務所の運営には常日頃から不安と心配がつきまといます。一つの
    失敗で事務所が傾きかねません。そのような不安は台風が明朝上陸する前夜
    の不安とどこか似ています。
       熱き茶を 淹れて台風 前夜かな

     事務所を開設して20年、人にたとえると成人式をまさに迎えたということになります。
    今後とも、お客様に対する感謝の念を忘れずに謙虚にやっていけばと思います。
       もう一度 謙虚になれる 冬至かな
                                            (所長弁理士 廣田雅紀)

2014年8月

  • 事務所便り/第19回 『タクシーの運転手さん』

     先週末、3歳の息子と母の三人で、母方の祖父の墓参りへ行きました。
     最寄りの駅からお墓までは、歩いて行ける距離でしたが、その日は小雨が降り、また雷が鳴る大気の状態が不安定な天候ということもあり、タクシーで行くことに。
     そのタクシーの運転手さん、お墓の場所がなかなか理解できず、頼りない印象でしたが、車内ではおしぼりのサービスを提供し、本格的な雨となった墓参りの際には、ロウソクに灯をともす母に、自分は濡れながら傘を差し掛ける心配りのある方でした。母によると、この地域のタクシーの運転手さんは、皆愛想が良く親切にしてくれるとのこと。
     本来タクシー業界はサービス業だと思いますが、ワンメーターで行ける距離だと、露骨に嫌な顔をし、急発進や急ブレーキを平気でする運転手に、嫌な思いをした人は私だけではないと思います。
     田舎のタクシーの運転手さんの心配りに触れながら、クライアントに満足・感謝していただけるように業務に取り組まなくてはと再確認しました。
                                                 (4年目特許技術者)

2014年6月

  • 事務所便り/第18回 『手紙のこと』

     小学生のころ、叔母に「文章力が身につくから」と勧められ、同い年のいとこと文通するようになりました。教育的指導のもとに始まった文通ですが、手紙を通じて仲が深まり、お互いが就職するまでの十数年にわたって、月に1、2通ほど手紙を交わしていました。
     文通で文章力が養えたかどうかは分かりませんが、筆不精にはならずに済んだようです。可愛いレターセットや記念切手、ふみ香や封印シールなど、文房具店の手紙用品売り場では、あれこれ見たり集めたりして、手紙を書くときの便箋や切手の組合せに悩むのも楽しみの一つでした。
     とはいえ、勤労生活も長くなり、また家庭の雑務にも追われる身となると、なかなか手紙を書く時間が得にくく、山ほど集めた便箋は所在なげに眠っています。このままでは黄ばんだ遺品となること必至なので、若気の至りで購入した恥ずかしい便箋(今では忘れられたアニメキャラクターや動物の毛皮柄など)を整理する傍ら、友達への暑中見舞いや誕生日祝いを、メールから手紙にシフトして、少しずつ在庫整理し、筆まめに回帰せねばと感じるこの頃です。
                                                    (事務担当 RK)

2014年5月

  • 事務所便り/第17回 『トルコ語って面白い』

     トルコ語は語順が日本語とほとんど同じです。とは言いつつ、人称によって変化した語尾を動詞や名詞や形容詞に付けたり、母音調和といって、語尾を付けるときは本体の語の母音と合せる点などなかなか使いこなせるまでには遠い道のりです。発音は、例外を除きアルファベットをそのまま読めばよいので、それほど難しくはありません。おもしろいところでは、「c」は、不思議なことに「シ」ではなく「ジ」と読みます。「i」のほかに「i」の上の点がないものもがあり、その発音は「イ」ではなく「ウ」になります。トルコ語は、アルファベットをそのまま読めることから、日本語にもある発音に出くわすことがあります。意味は違うのでときどきプッと笑ってしまいます。トルコ語クラスのために宿題の単語を調べていて、いつのまにか、あ、これも面白い発音だ、と面白がっていて一向に宿題が終わらないこともしばしばです。たとえば、「父」は、トルコ語で、「ババ」です。「母」は、「アンネ」。その結果(?)父方の祖母は、その単語を組み合わせて「ババアンネ」となります。ちょっと悲しいところでは(?)、「娘」は、「クズ」です。他にも、「宇宙」は「ウザイ」と発音し、たとえば、「熊」は、「アユ」と発音し、発音だけだと全然強そうなイメージが湧きません。
     最後に、ちゃんと役に立つトルコ語をいくつかご紹介します。
     「こんにちは」は、「メルハバ」(Helloのような単語です)
     「これは何ですか?」は、「ブ ネ?」(旅行で使えそうです)
     「とても美しい」は、「チョク ギュゼル」(旅行に行って、素敵な/美しい人に会ったら)
     トルコ語を習いつつ、歴史をひも解けば一層楽しくなりそうです。
                                                    (事務担当 YN)                                                 

2014年3月

  • 事務所便り/第16回 『ひな祭り』

     旧暦で行う地域もあるようだが、我が家は3月3日。毎年娘の健やかな成長と幸せを願って飾るお雛様も、早十何回目・・・。3日が過ぎると天気の良い日を選んで、なるべく早く片付ける。と言うのも、「お雛様を早く片付けないとお嫁に行き遅れる」という言い伝えがやはり気になるから。
     なぜこのように言われるようになったのか。厄払い説・しつけ説・結婚象徴説等など諸説あるようだが、明確な根拠はないようだ。季節の節目が変わったのに、だらだら出しっぱなしにしておくのはいかがなものか・・・ということからも言われるようになったのか。
     でも、直ぐにしまえない場合は、お雛様を後ろ向きにして飾り「お帰りになった」「眠っていらっしゃる」と解釈する方法もあるようだ。飾ったのはいいけれど、片付けるのがとても億劫になってきたこの頃。来年はこの手を使ってしまいそうだ・・・。
                                                    (事務担当:SS)

2014年2月

  • 事務所便り/第15回 『新婚生活と断捨離』

     昨年末から始まった新婚生活ですが、御多分に洩れず我が家もこまか~いことで折衝が発生しては折り合いをつけつつ、まだまだ地固めがつづく日々。
     やましたひでこの著書を読んでいないながら「断捨離」に共感している私としては、
           断=入ってくる要らない物を断つ
           捨=家にずっとある要らない物を捨てる
           離=物への執着から離れる
    を実践したいのだけれど、夫殿いわく「この(破れ)毛布がないと寝られへん!」のですね。ええ捨てませんよ、はいはい。でも、もういいかげん洗濯させてちょうだい。
     彼の中では、
           断りなく
    (ボロでも)捨てたら
           離婚するからね
    と変換される「断捨離」。理想的なモノすっきり生活への道のりは遠いようです。
                                 
     (入所2年目の特許技術者/内外事務 AN)

2013年11月

  • 事務所便り/第14回 『廣田事務所の明と暗』

     お父さんは、最近、ドライアイにもかかわらず、すぐ涙目になります。スポーツを見て涙し、ドラマを見て涙し、人生振り返っては涙します。
     事務所にもまた、ドラマがあります。
     代理人としての仕事をやるようになって、まだ5年ちょっとの駆け出しですが、かつてこんなに仕事をしたことがあったかしら。長い間、人の集団の中で仕事してきたけれど、かつてこんなにみんなが協力してやったことがあったかしら(いや、ない)。皆がいたからここまでやれた。皆がいるからこれからもやれる。
     うるるる・・・・。
     ウルルといえば、オーストラリアにある地球のへそ。へその緒はお母さんと胎児を結ぶ掛け替えのないパイプ。特許事務所は企業(人)と企業(人)を結ぶパイプ役。
     特許と掛けまして、貧乏人と解く。その心は、どちらも、真似(マネー)できない。
     儲けるのはたやすくありません。
                                                     (東海 裕作)

2013年9月

  • 事務所便り/第13回 『思い出の味』

    9月になっても日中の暑さが弱まらない今日この頃、冷たいものでのどを潤したくなる機会がまだまだ多いことでしょう。

    さて、皆さんには思い出の飲み物というのがありますか?
    「これを飲むと学生時代を思い出す」や「これは母の味、我が家の味だな」などなど...。
    私には500ml紙パックのレモンティーがその一つです。これは中学高校時代にとてもよく飲んでいたもので、毎日と言っていいほど飲んでいました。これを飲むと、学生時代の授業風景や体育の後の喉の渇きなど、とても鮮明に思い出されます。
    この1パックをどうやって放課後までもたせるかを友達と真剣に話したりもしていました。
     
    今でもときどき無性に飲みたくなって飲みますが、あの頃程おいしく感じられないのは、味が分かる大人になったのか、あの甘さをおいしいと思えないほど年をとったのか。

    美味しいと思えても思えなくても思い出の味は忘れたくないなと思う今日この頃です。
                                                   (事務担当 FO)

2012年6月

  • 事務所便り/第12回 『競争社会』

     先日のゴールデンウィーク、東京ディズニーランド行きの格安バスツアーにおいて痛ましい大事故が起こったのは記憶に新しいところです。この大事故は運転手の居眠りにより引き起こされた事故のようですが、その根本的な原因は、「格安」というキーワードに隠されているのかもしれません。
     さて、この「格安」ですが、もちろん我々の特許業界においても存在します。弁理士数が急増しクライアント獲得のためにそうせざるを得ないのかもしれませんし、「格安」に対する需要が多いことからその要請に応えるためにそうしているのかもしれません。価格面を含むこのような各事務所間の競争はクライアントにとってメリットがある反面、あまりにこの競争が行き過ぎると、業務遂行に無理が生じ、上記のバス事故のような人命を失うといった取り返しのつかない大事故ではないにしても、クライアントが思いもよらない大きな不利益を受ける可能性も否定できません。
     ところで、当事務所はといいますと、個人的には、「格安」という価格に重点をおいた事務所ではなく、「質」に重点をおいた事務所であると認識しています。私が入所した10年前に比べて、人員もより充実し、業務の質もさらに向上しているように感じます。また、事務所の取り扱い件数も増加していることからしますと、クライアントから一定の評価を得ることができているものと思われます。
     今日の厳しい競争社会の中、「格安」を売りにする事務所、「高品質」を売りにする事務所等、様々な事務所が存在しますが、最終的にはコストパフォーマンスが高い事務所が成長していくことは明らかであり、今後は事務所の選別がさらに進むことが予想されます。
     私自身にとっては、この便りの投稿が自分自身の業務について再確認するよい機会となりました。今後とも、クライアントの満足が得られるよう、コストパフォーマンスを常に意識して業務に取り組んでいきたいと考えています。
                                               (11年目の弁理士T)

2012年5月

  • 事務所便り/第11回 『スチームオーブンレンジ』

     私が幼稚園の頃、将来の夢は「コックさん」と「大工さん」でした。理由は、コックさんになれば毎日美味しいものが食べられるし、大工さんになれば自分の好きな家を建てて住むことができるからです。子供らしい発想でいいですね。残念ながら、現在は特許事務所での勤務ということで、夢とはかけ離れた仕事をしています。
     「コックさん」にはなりませんでしたが料理は好きなので学生時代は自分で料理することもありました。また、居酒屋のバイトで厨房を手伝った際に料理長から少しずつ料理を教えてもらいました。そのため、美味しいかどうかは別として一応簡単な料理は作ることができます。
     さて、先日電子レンジが欲しくて電気屋へ行くと、一目ぼれした電子レンジがありました。“スチームオーブンレンジ”です。高温の加熱水蒸気で調理することができるので、普通にレンジで温めるだけでなく、焼き物や揚げ物もできるというもの。いつも高額の買い物をするときは、欲しいものがあっても一度帰ってじっくり必要かどうか考えてから買う貧乏人性格なのですが、今回は思わず衝動買いをしてしまいました。先日、さっそく焼き魚にチャレンジ。こんがりと皮の表面が焼けてパリっとして、身はすごくふっくらとして、とても美味しかったです。今後は油を使わずに“鳥の唐揚げ”にもチャレンジ予定です。最近おなかが出てきたので、“揚げ物控えめ”を意識していましたが、やっぱり揚げ物も食べたくなり、根性無しの私はつい揚げ物を食べていました。そんな中で、この調理方法なら油を使わないから低カロリーのはずです。ダイエットにもつながればとひそかに期待しています。
                                               (国内担当 S.F)

2012年2月

  • 事務所便り/第10回 『風邪の予防

     ついこの間お正月を迎えたと思ったらもう節分。
     子供の頃、父が家中の窓を開けて「鬼は外、福は内・・。」と大声を張り上げて豆まきをしていた。その福豆を年の数より一つ多く食べた記憶があるが、どうやら最近では福豆よりも恵方巻きが主流であるらしい。また、父は年明け上野の鈴本演芸場で開催される「落語協会初顔見世興行」の寄席に行くのを毎年楽しみにしていた。初笑いで新しい年の幕が明ける。父にとってはどちらも家族の健康と無事を祈っての年初めの大切な恒例行事だったのかも知れない。
     「えー風邪が流行っていますが、風邪の予防には4つの条件があるそうです。人混みは避ける、ストレスを溜めない、ビタミンの補給、睡眠をとるーってんですが、それには寄席にくるのが一番!!寄席は適度な混み具合だし、ストレスなんて溜まるわきゃない。ビタミンは売店のジュースで補給できるし、睡眠にいたっては寄席ではたーぷりとれますから。」
     おあとがよろしいようで・・・・・・。
     皆様どうぞお風邪など召しませぬように。                  
    (事務担当 K.K)

2012年1月

  • 事務所便り/第9回 『花さそふ』

     特許技術者兼国内事務担当のNです。文才を買われて(くじ引きで)早くも二回目の登場です。
     さて、第9回は新年最初の更新となりました。そこで今回は新年らしく、百人一首の第9番のお話。
      『花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに』
     いわずと知れた小野小町の名歌です。
     学生時代を思い返せば、「世」「ふる」「ながめ」と掛詞になっており、『桜の花の色が、長雨がふりつづく間に色あせてしまった』という意味と、『私の容姿が、物思いにふける間にすっかり衰えてしまった』という意味があると習ったような気がします。
     この歌は、絶世の美女と言われた彼女だからこそ詠める歌である一方で、重要な教訓も残してくれています。すなわち、早い時の流れの中で、過ぎた時間を取り戻せないことを後悔している歌でもあるわけです。
     この一年、「いたづらに」過ごさないように気を付けたいものです。
      (特許技術者2年目:NN)

2011年12月

  • 事務所便り/第8回 『氷無し牛乳』

     その日は週末で、妻と二人の子供を車に乗せてどこかに出かけることになった。3歳の上の息子はここ1年半ほど恐竜にはまっており、彼の希望により行き先は博物館に決まった。博物館に入り、ティラノサウルスのブースが近付くと、彼は私を振り切って駆け出して行った。私がそのブースに着くと、彼はガオーッ、ガオーッ、ドシン、ドシンなどといいながら、こっちを見て足踏み運動をしている。ティラノサウルスにしてはずいぶん迫力がない。
     ひとしきり展示を見ると、お腹が空いてきた。いつもは館内のレストランを利用しているが、0歳の下の娘を背負った妻が近い場所がいいと言うので、その日は館内のカフェに初めてチャレンジすることになった。妻はハヤシライスなどと共に、息子用の飲み物として牛乳を注文し、「氷無しで」という一言を付け加えた。妻は息子がお腹をこわすといけないということでいつも氷を無しにしているのだが、これは少し過保護かもしれないなどと考えていると、店員が氷無し牛乳をこちらに差し出した。見ると、透明のプラスチック製のカップに入っている牛乳の量が明らかに少ない。コップの高さのわずか4分の1程度の高さである。いったいこれはと思っていると、店員はそれを察したのか、氷を抜くと牛乳の量はこの程度なのだと説明した。他の客との公平性を考えればそうするのも無理はないとも思ったが、飲みかけの牛乳のように見えて何だかわびしい。しかし食べ終わる頃にはそんなこともすっかり忘れて、また息子と恐竜の骨を見て回った。
     疲れ果てて駐車場に戻り、車を数分走らせると、息子はもうチャイルドシートの上で寝息を立てている。子供はのんきなものである。私が眠気を振り払いながら運転し、ようやく家の付近までたどり着くと、妻が近所のケーキ屋に寄ってくれという。理由を聞くと、息子が昼間の間、おむつ無しで過ごせるようになったことを祝うからだという。私の誕生日プレゼントがペンディングされているのは2年だったか3年だったか、記憶も定かでない。
     車を降り、しばらく歩くと、葉がすっかり落ちたモクレンの脇にケーキ屋が見えた。みんなでケーキ屋に入り、ケーキを選んでから脇のテーブルに座ると、妻がまた氷無し牛乳を注文した。しばらくすると、ウェイトレスが来て、それぞれのケーキとドリンクをテーブルの上に置いていく。モンブラン、アップルパイ、ショートケーキ、ホットコーヒー、ホットミルクティー、氷無し牛乳。そこで少し目が覚めた。氷無し牛乳が、大きめのガラスのコップになみなみと注がれていたのである。気をよくした私はケーキを頬張り始めると、半分ほど食べた頃だろうか、突然、バタンという音がし、一瞬の間をおいてパリンという音がした。顔を上げると、ほんの少ししか減っていなかったはずの氷無し牛乳のコップが、床に落ちて砕けていた。テーブルも息子のズボンも牛乳で濡れ、床には牛乳とガラスの破片が散らばっている。泣き出した息子につられて娘もすぐに泣き始めた。泣きわめく息子のズボンを脱がせ、椅子を拭き、相変わらず泣き止まない息子に今度は予備のおむつを履かせる。その間中、息子と娘は泣き通しで、てんやわんやの大騒ぎだ。
     なんとか落ち着きを取り戻し、残りのケーキを食べることになった。さきほどの気分の良さは完全に吹っ飛んで、なんだかみじめな気分である。頭の中では、なんだってこんなことになってしまったんだという考えがぐるぐる回って離れない。すると妻が、ウェイトレスに、代金払いますので新しい氷無し牛乳をくださいと言った。私は内心、そんなことをしてもコップを割る前の気分にはもう戻れないし無駄だと思ったが、言い争う気力も残っていなかったので黙っていた。
     しばらくすると、ウェイトレスが新しい氷無し牛乳を持ってきた。ウェイトレスはそれをテーブルにおくと、代金は結構ですと妻に言った。妻は恐縮し、いえいえ払いますと言った。たったこれだけのやりとりではあったが、私はそれを聞いて、それまで沈んでいた気持ちが急に晴れていき、さっきまでのみじめな気分が消えていくのを感じた。
     今度は無事食べ終わり、会計を済ませると、下はおむつ一丁という姿の息子がケーキのショーケースに顔を張りつけている。どうやらまだ食べるつもりでいるらしい。ちょうどそこへ見知らぬ母娘が店に入ってきて、右から左へとケーキを眺めていき、その途中で、動きがぴたりと止まった。息子のおむつに視線が釘づけになっている母娘を横目に、私は息子の手を引いてドアに向かうと、さきほどのウェイトレスがドアの近くでお辞儀をしている。私はゆっくりと店を出ると、空を見上げ、今日見たそれぞれの氷無し牛乳を思い浮かべながら、その順序に感謝した。モクレンの枝の向こうに連なっているひつじ雲が牛乳色に見えた。
                                            (弁理士7年目:M.H.)

2011年11月

  • 事務所便り/第7回 『読書の秋』

    「かんじんなことは目には見えない」―20世紀文学を代表するサン=テグジュペリ『星の王子さま』は誰もが一度は読んだ名作である。児童文学とはいえ、奥に隠される深いメッセージは単に子供の本として片づけられない何かがある。この本の解釈として、王子さまのモデルは誰かということは長く議論されてきた。子供の象徴やイエス=キリストであるという多様な説の中に、筆者自身の投影であるという有力な説がある。王子さまの「本当に大切なもの」を知るなら体の死を恐れないという発言と、筆者の同時期の作品『人間の土地』における他者との関係の尊さを知るならフランス出兵も恐れはないとの発言とが合致していることから、王子さまは筆者の分身であると言われている。いずれにしても、本著は様々な視点から読むことができるだろう。王子さまに自分自身を投影することもできるかもしれない。かつての子供が大人になった今、読み返すごとに魅力が増していく、そんな本である。
    もう一度読み返してみてはいかがでしょうか。                
     (翻訳チーム Y.M)

2011年9月

  • 事務所便り/第6回 『酔人Mの世迷言』

    脈絡は覚えていない
    所内恒例のすだちパーティで
    春夏秋冬と聞かれヒルクライムと即答したら
    やっぱ泉谷しげるでしょうと諭された
    随分若い世代の女性なんだけどしぶいなあ
    帰りのホーム、そんなことを反芻しながら
    60年代、70年代は社会にパワーがあったんだなって思うのは歳のせい
    ついでにマイ・バック・ページ(妻夫木聡主演の映画)の主題歌ボブディランだったなって思いだしたのは酔いのせい
     
    季節のない街にうまれ  風のない丘に育ち ~
    それでも蝉しぐれがこおろぎの音にいつのまにかかわり、節電の夏から季節が秋に移ろう
    今年の秋はどこ行こうか 今年の冬はどこ行こうか ~
    明日(9月12日)は中秋の名月、とりあえず早く帰ろうか
    その前にdocketingしないと叱られる

2010年12月

  • 事務所便り/第5回『年の暮れ』

     さて、本年も残すところあとわずかとなりました。事務所だよりも今回、第5回をもって本年入所のメンバーは一巡となります。私は研究者から転身、平成22年4月に弊所に入所して、右も左もわからないところからのスタートでしたが、早くも本年が終わろうとしています。来年も、少しずつでも成長できれば、と思っています。科学技術に対して風当たりの強い昨今ですが、本年は小惑星探査機「はやぶさ」の帰還や日本人のノーベル賞受賞に沸いた一年でもありました。そして、12月24日には臨時閣議で2011年度予算案が決まり、2年連続で削減する方向だった科学技術振興費が菅首相の鶴の一声で2010年度を上回る金額への増額となったニュースは、関係者にはほっとするクリスマスプレゼントになったのではないでしょうか。特許の排他権としての価値から、科学技術、特に学術研究と特許は相いれないものとも認識されがちですが、ライセンスインによる事業化やライセンスアウトによる資金調達などにより、科学技術をサポートできる面も持っています。科学技術は国を支える柱の一つですので、上のような国等による支援と比べれば微力ではありますが、特許出願等の業務からサポートできれば嬉しく思います。皆さま良いお年をお過ごしください。来年もよろしくお願いいたします。
                                (1年目A.M.)

2010年12月

  • 事務所便り/第4回『つぶやき』
     
     みなさん、こんにちは。特許技術者兼外内事務担当の、T岡田です。分子生物学の分野で約10年間研究に従事し、今年の4月から弊所にて勤務しております。入所する前は、特許事務所のイメージとして「特許申請を希望する人の代理人」程度の理解しかありませんでした。実際はその通りなのですが、お客様である特許申請者(発明者)の意見や要望を汲み取りながら、法律やこれまでオープンとなっている情報と照らし合わせ、できるだけ広い範囲で特許を取得することが望ましく、そのためには自分の理解力はもちろん、お客様に親身に接して信頼関係を築くことがいかに大事であるかについて気づかされました。一方、特許は、国益の観点からみても非常に重要であり、外国から日本へ申請した特許も含め、公正且つ厳正に審査される必要があるため、審査官との共同作業の側面もあると思います。昔、プロ野球のヤクルトに在籍した元メジャーリーガーであるホーナー選手が、日本の野球に対して、「地球の裏側にもう一つの野球があった」と述べております。何時ぞやの日経新聞の記事に「日本、韓国及び中国の審査官が、審査基準が異ならないよう意見交換をした」とあったように、国によって特許の審査基準が大幅に異なるのは好ましくないように思われます。
                                                
      
    (特許技術者兼外内事務1年目:T岡田)

2010年11月

  • 事務所便り/第3回『3』
     
     事務所便りも第3回となりました。特許技術者兼国内事務担当のNです。
     今年3月まで大学院の博士課程に在籍し、博士号取得と共に4月から弊所にて勤務しています。知財の経験はおろか、社会人としての経験もないままに、生意気にも弁理士試験の合格を目指して試験勉強と仕事の両立を心がけています。前回の事務所便りでも語られておりますが、弁理士や先輩の補助は大変心強く、弁理士試験合格を目指すにも良い環境が整っている職場だと思います。
     さて、第3回ということですが、「三」という数字は「三人寄れば文殊の知恵」「石の上にも三年」と、日本人が好きな数字としてよく取り上げられます。特許法で言えば第三条は期間の計算について、いわゆる『初日不算入の原則』が記載されています。法に則った手続きをする以上、法定期間は常に意識する必要があり、実務において最も重要な条文の一つだと言えます。ちなみに、私が弁理士試験の勉強を始めるにあたり、最初に覚えた条文でもあります。
     試験勉強も事務所便りも、「三日坊主」にならなければ良いのですが・・・
                                               (特許技術者1年目:NN

2010年11月

  • 事務所便り/第2回『特許事務所に入社して』
     
     入所5ヶ月目で、現在外内事務を担当しております。私はこれまで研究職に従事しており、知財に関して全く知識を持たずに入所しました。そのため不安はかなりありましたが、先輩所員のサポートもあり徐々に仕事にも慣れてきたところです。
     外内事務とは外国の発明を日本の特許庁に出願するための手続きを行う仕事ですが、私は理系出身であることもあり、勉強も兼ねて明細書作成補助やチェックなど、技術内容に係る仕事もさせてもらっています。この仕事を始めて一番大変に感じることは、異なる分野の発明を素早く的確に理解する必要があることです。研究職に就いていた時は、研究分野は限られており、その分野に関する知識だけを身に付けさえすればよかったのですが、この仕事では同じバイオ系であったとしても医薬品、実験方法、食品などと分野が多岐に渡っていて、発明の内容を理解するのに苦労することもあります。ただ、入所してわずか4ヶ月ながら、研究職のままでは決して接することがなかっただろう研究分野に多く触れることができ、研究とは異なる面白さがあると感じています。
     ちなみに、化学系の博士号取得者(ポスドク含む)を募集中です。現在4名の博士号取得者が活躍中です。
                                         
      (事務1年目:
    ay

2010年10月 

  • 事務所便り/第1回『新興国と特許』


     近年の経済成長が著しい国を表す、”BRICs(ブリックス)”という言葉があります。ブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字をつなげた言葉で、広大な土地や豊富な資源、人口が多いことなどが注目されている新興大国の代表です。最近はアメリカやヨーロッパ等と併せて、これら新興国への特許出願が目立ち、特許の「未来への投資」という一面を実感することができます。BRICsが提唱されてから、今年で早10年。世界の投資家はポスト・ブリックスとして、NEXT11(韓国、バングラデシュ、エジプト、インドネシア、イラン、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、トルコ、ベトナム、メキシコ)やVISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)といった新たな可能性を模索しています。どんな国への出願依頼にも応えられるよう、今後も日々勉強を続けていきたいと思います。